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★2次元にだって嫉妬する - 1 ページ5

正直どうしようと思っている。なぜか帰宅してからのAの機嫌が悪い。いや、帰宅した瞬間から既に機嫌が悪かったので帰宅前から悪い可能性は大いにあるがとりあえずなぜか彼女の機嫌が悪かった。

 いつも聞こえてくるただいまの一声はなく出迎え損ねたせいなのかと思ったが、どう考えても声をかけられなかった以上俺のせいではないだろう。それでもおかえりと声をかければAはちらりとこちらを一瞥した後、蚊の鳴くような声で「ただいま」とだけ返して自室へとむかっていってしまった。

 彼女の機嫌を損ねるような事をした心当たりは一切ないため手の施しようがない。しかし、会社でなにかあったのなら帰宅して早々に「聞いてよ!」と飛びついてくるはずなのだ。それがないと言うことは、つまり、原因は俺ということになる。ならば直接聞いてみるしか解決方法はないだろうと意を決して不貞腐れているAへと声をかけた。

「なんでそんな機嫌悪いの?俺のせい?」
「……そうだといったら?」
「心当たりがないので教えて欲しいです。」
「いやです。」
「ええ……?」

 ツンとそっぽを向いたAは思っていたよりもご立腹のようで普段のデレさがまるでない。その様子を見て懐かない猫を見ているような気分になるのは俺の脳内でフィルターがかかっているせいなのか。うーん……、まあ、これはこれでありだなと新しい彼女の魅力に頷きながらもどうすべきか考えてひとつ賭けに出ることにした。

「わかった。もういい。」
「え?」
「このままお互い不愉快なのは良くないし、俺は実況撮るために部屋に籠る。俺の事待たなくていいからAは寝ていいよ。」

 さも釣られて不機嫌になりましたとでも言うように語尾を強めて言い切ればAの表情に戸惑いが生じる。俺の急な対応に怒らないあたり自分が悪いという自覚はあるようだがなかなか口を開こうとはしないので諦めて席を立とうとすれば慌てたようにAは俺に手を伸ばした。

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作者名:笹森 糺 | 作成日時:2020年7月18日 18時

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