勿論、描けますとも！ - 1 ページ18
「起きてる？」という控えめな声がして寝室のドアが開く。こちらを伺うようにして覗き込む牛沢さんは見慣れたもので、きっとまた動画の撮影中にやってきたのだろう。
「起きてますけど、今度はどうしたんですか？」
「何も聞かずにちょっとこっち来て。」
「ふふふ、はいはい。行きますよーっと。」
呼び出される時は4人で実況を撮っている最中に私の話題が出た時だけだ。つまり今回も何かしら私に聞きたいことがあるのだろう。あまり難しくないことだと助かるなあと考えていれば、牛沢さんがいつも使用している椅子を指さした。
「ここ座って。」
「はい。」
「ちょっと待ってね。……おい、お前ら！天赦連れてきたから検証しようぜ、検証。」
「まじで連れてきたのかよ！天赦、元気？」
「んー、ちょっと眠たいかな。今何時だと思ってんの。」
「真夜中だねえ。」
「良い子は寝る時間やな。」
レトさんとガッチさんののんびりした回答に「違う、そうじゃない」と思わず突っ込んでしまい話が進まないのはいつもの事でそれを軌道修正する牛沢さんもいつもの事である。うん、今日もこの4人は平和だなぁ。
「あのさぁ、天赦。聞きたいことがあるんだけど。」
「はい、なんですか。牛沢さん。」
「絵描き歌って知ってる？」
「もしかしなくても私の事バカにしてます？」
「うわ、うっしーの奴、ひでえな！」
「流石に知っとるよなあ？」
「違う違う！つーか、お前らは知らなかっただろうが！うるせえぞ！」
わいわい、ガヤガヤ。そうやって3人で盛り上がっている中、ガッチさんは笑いながら1人でよく分からない生き物をせっせと描いていて、よくよく見ればその画面には他に国民的アンパンヒーローの顔とアヒルみたいな何かと、あと顔なのかなんなのかよく分からない赤と黄色の何かが描かれている。
そして右下に描かれている何かは確かに絵描き歌で描けるコックさんのように見えなくはないが何か余計な線がある気もする。でも多分きっとそうだろう。
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作者名：笹森 糺 | 作成日時：2020年7月18日 18時
