★練習相手 - 2 ページ17
「フォロワーさんにね、オススメしてもらったの。マリメ面白いですよ〜って。」
「フォロワー？」
「そ。実況垢とは別のフォロワーさんね！だから、マリメやったことないし、面白そうだからやってみようと思ったの。」
「でも一人じゃ出来んと言うわけか。」
「ごめいさつ〜！そういうことなのでよろしくお願いしますね、キヨ先生！」
13金の時といい、Aは俺らの誰かがやっているゲームに関しては必ず誰かに教えを乞う。でも、よくよく思い出してほしい。
「なんで俺？」
「え？」
「うっしーもマリメしてたっしょ？」
「……あ、」
「動画見たことある？」
「……ある、けど……。」
「忘れてたな？」
その言葉にぎこちなく首を縦に振ったAに俺が笑い混じりの溜息をついてしまうのは仕方のない事だった。だって、そうだろう。うっしーも実況したことがあるのだからわざわざ俺の家に来ることもなく思い立ったその日に教えてもらうことができたはずなのにそのチャンスをみすみす逃していたのだから。
「この間みたいに『恥ずかしいから』とかそういう理由があるのかと思ったらただ単に忘れてて、俺に連絡してくるとかアホか？」
「で、でも！横スクロールゲーム苦手なのは本当だし！……ここで練習してからお家に帰って一緒にやる。それでよし！」
「『よし！』じゃねーんだよ。またうっしーから文句言われんのは俺なんだけど？」
「え？牛沢さんはそんな狭量じゃないでしょ？」
「……それまじで言ってる？」
俺の言葉にきょとんとした表情のAに嘘はなく本当にそう思っているのだろう。あの独占欲が強い一面を知ったらどう思うのだろうかと思いつつ、自分に対して評価が著しく低い彼女は知ったところで信じなさそうだなと余計なことまで思いついてしまった。
「まあ、いいや！俺も久しぶりにやるし腕慣らし程度に付き合ってやるよ。」
「ありがとう！そのために来たのに出来なかったらどうしようかと思った。」
「今から準備するからもうちょい待ってて。」
「私が来る前にしとけよ！……と言いたいところではあるけど、いつもの事なので悲しいことに慣れてしまいましたねぇ。」
手伝うよと申し出たAの言葉に「待ってましたぁ！」と喜べば、どちらともなく笑いが起きる。
さあて、今日も頑張って実況やっていきますか！
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作者名：笹森 糺 | 作成日時：2020年7月18日 18時
