★キスをする - 2 ページ15
「寝たフリする方が悪いでしょ。何回も起こしてるのにさ。」
「だって布団が私と別れたくないって言うから。」
「今すぐそんな男とは別れて俺んとこに来いよ。」
「はー……さすがモテる男は言うことが違うなあ。」
そんな意味のわからないことをボヤきながら起き上がる彼女の肩口へ顔を寄せ吸い付いてからずり落ちていたTシャツを直してあげればボボボっと瞬時に首まで赤くしてAは狼狽えた。そういう所がやはり彼女らしくて可愛らしい。
「目は覚めましたか?お姫様。」
「ばっ、馬鹿じゃないの……!?」
「セオリー道理じゃなくてもお目覚めバッチリっしょ?」
「効果抜群、一撃死なんですけどぉ……!」
「ははは!俺を出し抜こうなんて無理なこと考えるから倍になって返ってくるんだよ。」
「くっ……肝に銘じておきます。」
そう言って真っ赤な顔で肩を抑えるAにもう少し悪戯してやろうと顔を近づければ彼女は目をつぶって自分から触れるだけのキスをしてきた。それに驚いている俺をよそにAはベッドから素早く降りてバタバタと廊下を走っていく。そして廊下に大きな声が響いた。
「やられたらやり返す……倍返しだ!」
「いや、だからそのシリーズ俺見てないってば……。というか、」
倍返しにすらなってないだろ、という独り言は誰にも聞かれることなく俺と共にベッドに沈んだ。
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作者名:笹森 糺 | 作成日時:2020年7月18日 18時