46 side Nissy ページ46
西「ねぇ、なんか飲む?」
部屋に戻りシャワーを浴びて、帰りがけに見つけたスーパーで買ったものが並ぶ冷蔵庫を開ける。
西「A?」
返事がなくて、ソファに座るAを覗き込むと、先にシャワーを浴びたAは座ったまま眠ってしまっているようだった。
つん、と頬をつついてみても起きる気配もない。
西「寝ちゃったか…」
たくさん歩いたからきっと疲れたんだろう。
顔にかかる髪をそっとよけてやりながら考えるのは俺のバッグの中に入ってる一枚のメモの存在。
収録の最後の日にこっちのスタッフさんに渡されたもの。
西「これは?」
ス「ほら、こっちに日本人の子がいるよって話したでしょ?その子の事務所の連絡先わかったら教えてほしいってAが言ってたから」
西「…Aが?」
西「そう。知り合いかもしれないんでしょ、すごいよね!遠い場所で再会できるって」
数字と見慣れない文字の羅列を目で追いながら、スタッフさんの言葉を聞いていた。
これを渡すべきか無かったことにしようか、悩む。
朱里に会いたいと言ったA。
俺が嫌なら会わなくていいと言い切ったA。
たかを愛していると笑ったA。
俺は朱里と会ってほしくない。
もう、傷ついた過去に振り回されるようなことにはなってほしくない。
事実…。
朱里かもしれない人物と遭遇してから、Aは少し不安定になった。
あんなに心も体も傷ついてご飯も食べられなくて、たくさん泣いてたくさんお互いに苦しんだ時間。
思い出すだけで胸が苦しくなる。
それを思えば会わせたくないと思うのはおかしくないよな。
だけど、Aの気持ちは?
きっとAは、俺が敢えてこのメモを渡さず会わせなかったことを知っても何も言わないだろう。
俺がそうしたいならそれでいいと笑うだろう。
でも…、そんな思いもあって、今日カフェであんな言い方をしてしまった。
「気になること、ない?」なんて狡い言い方。
なんであの時、このメモのことを言わなかったんだろう。
Aの歩く道を邪魔したくないなんて、よく言ったよな俺。
Aがしたいこと、気になること隠そうとしてるのは俺なのに。
でも、やっぱりどうしても、これだけは無理だ。
小さな紙切れを取り出して、勢いで二つに裂く。それをまた、半分にしようとして、手がとまる。
「あーもう!どうしたいんだよ俺…」
手の中の二つ分かれた紙切れを握りこんで途方に暮れた。
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(´・ω・`)(プロフ) - 大好きな人は。めちゃくちゃ素敵で何度も読み返してます!できたら、ショートのパスワード教えて欲しいです。 (10月29日 7時) (レス) id: e27e13d6a3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ - 大好きな人は。とてめ素敵なお話でした(^^)♡こちらの作品も1から全て読みたいです!パスワード教えて頂けると嬉しいです!! (2022年11月22日 1時) (レス) id: 7929bd4039 (このIDを非表示/違反報告)
eringi01030214(プロフ) - 先日読み終えたのでいまから見させて頂きたいと思ったらパスワードかかっていたので教えていただきたいです(;;) (2022年11月21日 3時) (レス) id: ea8392449b (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 今から読ませて頂きます♪1から全て読みたいのでパスワード教えて頂きたいです!!! (2022年11月11日 9時) (レス) id: 6961cbc2a1 (このIDを非表示/違反報告)
eight888loooove(プロフ) - 大好きな人は。読ませて頂きました!ステキなお話で一気読みしてしまいました^ ^他の作品も読ませて頂きたいです!パスワード教えて頂きたいです。 (2022年11月5日 7時) (レス) id: 17095d27b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リリィ | 作成日時:2020年5月27日 7時