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西「だから、うん…そう…。
なんて言ったらいいのかよくわかんないけど、全部知りたいとか全部欲しいのはきっとお互いさまってこと。
Aがおかしいんじゃなくて、きっと、俺たちお互いを好き過ぎてんの」
いい言葉が見つかんないって髪をくしゃくしゃとかきまぜて、困ったように眉を下げる。
西「過去のことは、きっかけがあればいくらでも話すことがあるだろうし、仕事のことはさ、たぶん、ほぼほぼ俺のここにしかなくて、全部知ってる人なんて世界中探してもいないのは、Aもわかるやろ?」
ここね、ここと自分の頭をつんつんと指さすたか。
「それはそうかも」
確かに、と思ってくすりと笑みがこぼれる。
西「昔は、あ、Aがマネだった頃ね。
Aの人間関係って仕事繋がりが多かったから、あまり感じなかったけど、今は別々の仕事しててお互いのいる場所が違うから、俺の知らないAを知っている、俺が知らない人がいるってことやん。でも」
「でも?」
西「子供の頃?Aの世界は家とピアノと学校しか無かったって言って前に言ってたやん。狭い世界で生きてたって」
「うん」
西「でも今は違う。Aは、A自身の力で世界を広げて、A自身の選んだ道を歩いてる。
だから、邪魔はしたくない」
言葉を選びながら、たかが伝えてくれる気持ち。
大きくてあったかくて、涙が出そうだ。
西「なんてかっこつけてるけど、こう見えてかーなーり、我慢してるけどね」
Aにはもっと楽な道を用意してあげることもできるのにって、唇を尖らす。
「甘やかすのが、上手なんだから」
西「それはこっちのセリフだわ」
「そうですか?」
西「そうですぅ」
Aの西島隆弘至上主義はよく知ってる、と今度はパンを小さくちぎって私の口へ運ぶ。
西「はい」
「っ、ちょっ…」
もぐもぐとなんとか咀嚼して、飲み込む私をニコニコしながら見つめるたか。
西「俺ね、Aが食べてる顔好き」
「なんですか、それ…」
西「なんでもない、ただそうなだけ」
「返事に、困る…」
西「ありがと、でいいんじゃない?」
「じゃあ…ありがとう」
西「どういたしまして、あとは?不安なこと、気になること…ない?」
「…うん、ない」
西「ほんとに?」
「ほんとに」
たかは大きなため息をついて、じっと私を見た。
西「Aは、嘘が下手だね」
「え…」
西「俺はたぶん、ひとつは気づいてるつもりなんだけど?」
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(´・ω・`)(プロフ) - 大好きな人は。めちゃくちゃ素敵で何度も読み返してます!できたら、ショートのパスワード教えて欲しいです。 (10月29日 7時) (レス) id: e27e13d6a3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ - 大好きな人は。とてめ素敵なお話でした(^^)♡こちらの作品も1から全て読みたいです!パスワード教えて頂けると嬉しいです!! (2022年11月22日 1時) (レス) id: 7929bd4039 (このIDを非表示/違反報告)
eringi01030214(プロフ) - 先日読み終えたのでいまから見させて頂きたいと思ったらパスワードかかっていたので教えていただきたいです(;;) (2022年11月21日 3時) (レス) id: ea8392449b (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 今から読ませて頂きます♪1から全て読みたいのでパスワード教えて頂きたいです!!! (2022年11月11日 9時) (レス) id: 6961cbc2a1 (このIDを非表示/違反報告)
eight888loooove(プロフ) - 大好きな人は。読ませて頂きました!ステキなお話で一気読みしてしまいました^ ^他の作品も読ませて頂きたいです!パスワード教えて頂きたいです。 (2022年11月5日 7時) (レス) id: 17095d27b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リリィ | 作成日時:2020年5月27日 7時