歩む道。 〜With a lot of love〜

40 side Nissy ページ40

「ごめ…っ」



俺にぐっとしがみついたA。



西「いや、全然、それより…、怪我ない？一旦ホテル戻る？」




そのままじゃ歩けないだろうと、そう言うと。




「怪我は平気。でも、あの…久々の海外で慌ててたのか靴、これしか持ってなくて」




どんなときも用意周到なAが、そんなこと言うのはかなり珍しい。




西「じゃあ、一つ目の行き先はカフェの前にあそこだな」




通りを挟んだ大きな建物を指さす。
多分、デパートだろう。大きなショーウインドには何体ものマネキンがポーズを取っている。



西「スニーカー買おうよ、きっとたくさん歩くからさ」

「うん。あ、じゃあ…、お揃い、にしません？」




少し照れながらそう告げたAに少しだけ驚く。




西「え？」

「浮かれすぎ、かな？」

西「や、大賛成」

「ほんと？よかった」



幾つだよ俺たちって思うくらいにお互い浮かれてる。

Aが隣で笑っててくれる奇跡に、空にも太陽にも風にも、待ちゆく人々にも、なにもかもに感謝したいくらいだ。



ひょこひょこと歩きにくそうなAの前にしゃがみこむ。



西「乗って」

「え、や、でも…」

西「いいから、ほら、そこまでだから」

「うん」




おずおずと体を俺に預けて首に手を回すA。




西「あ、前にもおんぶして歩いたよな、こっちでさ、Aが酔っ払ってさ」

「そんなこと、ありましたね」

西「なんか、色々あったよな俺達」

「うん」

西「きっとこれからも色々あるんだろうなぁ」

「そうだね」

西「でもさ、何があっても二人で歩いていこうよ、これからもさ」

「うん」




短い会話の間ですぐについたお店の中で二人で履くスニーカーを選んだ。ちょうどよくお互いの足に合うものが見つかって顔を見合わせて笑いあう。

みんなが思う当たり前とか普通のデートはほとんどしたことない俺たちだからこそ、小さなことだって幸せだ。
そんな気持ちを込めて手を握って立ち上がれば、Aもぎゅっと握り返してくれる。


そして二人でお揃いで買ったスニーカーを履き、歩き出した。




「あ、待って」

西「ん？」




スマホを取り出したAが、並んで立つ俺達の足元を写真におさめた。



「へへっ、記念写真」

西「顔写ってないじゃん」

「いいの、私とたかだけがわかればいいの」



本当に嬉しそうに笑うから、つられて俺も笑顔になる。



西「その写真、あとで送って」

「うん！」

41 side Nissy→←39

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す