歩む道。 〜With a lot of love〜

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好き


と自分から言うことはあったかもしれないけど
こうして


愛してる



と自分から口にするのは初めてだと思う。




愛って大きくて重くて尊くて
なかなか言えない言葉。



たくさん勇気を出して伝えたのに
無言のままのたか。




何か言って欲しいと言えば
うんと言っただけで私を抱きしめた。



そしたらなんだか
それで十分だと思えた。






ふたりで重ねてきた時間は
年数にするともう片手では足りない。


こうして生きていく時間が
今まで生きてきた時間の
1/3になり
半分になり
ほとんど全部になるまで
ずっとずっと一緒にいたい。


そんな気持ちが
たかに伝わってるといいな。




西「…ご飯、食べようか。」

「うん。」

西「適当に頼んどくからシャワー先にどうぞ？」

「はい。」





朱里さんの話題はもう触れることも
触れられることもなく
一日の疲れをシャワーでさっぱりと流して
二人でご飯を食べる。

とりとめもない会話をしながら食事を終え
抱き合って眠る。




その体温に包まれると穏やかに眠れる。





はずだったのに。





なぜか私はこの異国の地で
久しぶりに昔の辛い夢を見た。





(ピアノを弾かないAは
いらないのよ

どうしてもっと
上にいけないの？

努力が足りないのね
レッスン増やしましょ。)





忘れたいと閉じ込めていた記憶が蘇る。





一人暗い部屋で膝を抱える10代の私。

心が温かくなることも
誰かに頼ることも甘えることも
できずにいたあの頃。

泣くこともなく
ただぼんやりとピアノを見つめてる私を
今の私が上から見ていた。





心の痛さが伝わってきて苦しい。






そっかあの頃。
本当はすごく苦しかった。
辛いって感情をうまく表現できなかっただけで
ずっと苦しかったんだ。



(ごめんなさい
もっと頑張るから


お願いだからいらないって
言わないで


こっちを向いて
私を見て…)





声に出して叫びたいのにできない。






っ、A。Aっ？




「……っ、はぁ…、た…か、」




はっと目を開くと心配そうな
たかの顔が目の前にある。


どれが夢でどれが現実か
わからなくてうまく息ができない。




西「A？どした？ちゃんと息して、
そう、吸って…吐いて…。」

「た、か…っ」




短い呼吸を繰り返しながら
たかに手を伸ばしてぎゅっと抱き着いた。

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