歩む道。 〜With a lot of love〜

24 side Nissy ページ24

翌朝。



「たーかー！朝！起きて！時間！」




ゆさゆさと揺さぶられて
眠りから引きずり起こされる。




西「ん…。」

「もう！起きろー！」

西「あとちょっと…。」

「だーめーでーすー！」




シーツをはぎ取られて渋々目を開ける。




「ほら、みんなで朝ごはんでしょ？」

西「ん…わかってる。」





体を起こせば、少し目が覚めて。




西「顔洗ってくる…その後、昨日の話聞かせてよ。」

「…私寝ちゃってたんだね。運んでくれてありがとう。」

西「重かったわぁ。」

「ひどっ！」






支度を終えて、集合時間まであと15分。




ホテルのラウンジで
俺はコーヒー、Aは紅茶を飲みながらAの話を聞く。




「仕事、終わったあとでも…」

西「気になるやん、そんなん。」

「です、よね。あの…。」

西「うん。」

「昨日のお店で見かけたんです。…あの…。」

西「誰？」

「朱里さん。」

西「え…あか、り…って、あの？」

「うん。その後だったから余計に昨日のあれ。
ちょっと取り乱しちゃって…。」

西「そっか…。」

「お店の人とも顔見知りっぽい挨拶してたし…、やっぱり見間違いかも。」





無意識になんだろう、首元のリングを握りしめてるA。

完全に癒えることのない消えない心の傷の
一番の原因になった朱里。
Aから奪った指輪を返してきた朱里。





今どこで何をしてるのかなんて、全然知らなくて。
まさかここであいつの話をすることになるなんて
思いもしなかった。






西「あんまり気にすんなよ。」

「変なこと言ってごめんなさい。さ、もうみんな来るかな？」





Aはにこりと笑ってカップの紅茶を飲み干した。
相変わらず、外ではなかなかコーヒーを飲めない。



Aの生きていく道を、大きく曲げた朱里。
許せるかと言えば、今でも許せない気持ちのほうが大きい。





Aは…どうなんだろ？





「ほーらー！行きましょ。
私なら大丈夫！
ってこんな話した私が悪いんだけど。」

西「なんかあったら…またちゃんと話してよ。」

「はい。隠すつもりなら、最初から言わない。
ちゃんと、わかってるから。」




微笑んだAが、俺の手を握る。
きっと不安な俺の気持ちを見透かしてる。




西「ん、ごめんな。」

「ごめん、より…」

西「ありがとう、だな。」

「うん。」





そうだ。



もうあの時の俺達じゃない。
だから、大丈夫。

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