歩む道。7

310 side Nissy ページ10

西「もしもし。千晃？」



電話は千晃からだった。



千晃「にっしー…。



あの、ね。」


その後しばらくの沈黙と
グスグスと鼻をすする音。



そして
千晃がんばれ、という男の声。
旦那さん、かな？




西「どうした？


あ、今日。
来てくれてありがとな。」



うん、と小さな声で
返事をした千晃。



千晃「にっしー。


私ね…結婚も妊娠も…。
後悔してない。


でも…。


AAAは私にとって
何物にも変えられない大切なものだった。
嫌なことも辛いことも
たくさんあったけど
AAAが大好きだった。


でももう戻れない。


だから、私。
ちゃんと自分の道を決めて歩いていくよ。



Believe own way

だもんね。」



その声は少しだけ震えていて、
だけど、強い決意が伝わる。



それを聞いて俺はやっと心から
ずっと言えなかった言葉を言える気がした。




西「千晃。結婚おめでとう。」




千晃「ありがとう。


にっしーも、仕事頑張って。
あと、
Aちゃんのこと大切にね。」



西「わかってるって。」




千晃「どっちかって言うと
にっしーのが惚れてそうだよね。」


千晃の言葉に、


西「るせーよ。


でも、
そうかもしれないな。」


そう答えた俺に
ふふっとと小さく笑った千晃。


千晃「色々あったし、
きっとこれからも大変なんだと思うけど。



Aちゃんは、メンバーみんなにとって
大切な存在だからさ。



心も体も…。
元気になれるように祈ってる。


じゃあ、ね。」




俺も
じゃあと、言って電話を切った。
ずっと抱えていた
千晃に対する不透明な想いが
クリアになった気がする。


千晃とこうして話すことができたのも
きっとAのおかげだ。



あいつが、
千晃を会場に呼んでくれなければ
こんな会話はできなかったはず。




だからAが帰ってきたら
たくさんの感謝を伝えたい。



どうしたらこの想いを全て伝えられるかな。




幸せな悩みを抱えながら、
疲れきった俺の体は自然と眠りにおちていった。

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