歩む道。7

347 side Nissy ページ47

福井公演から数日たったある日。



いつもより少しだけ
早く家に帰ることができた俺は
Aに電話をかけた。


もうすぐAの誕生日だ。



だけど。



アリーナツアーをしながら、
ドーム公演の準備を進めている俺に
休みらしき休みはない。


西「ごめんな。

誕生日、一緒に過ごせなくて。」



と謝る俺に、


「そんなの、私が気にすると思う？」



といつもと変わらない口調で返すA。



去年までも
誕生日に誕生日らしいことは
できなかったものの、
一緒に仕事をしていたから
一緒にいられたんだってことに改めて気づく。




西「離れてるからこそちゃんと祝いたかったのに。」




「そんなふうに思ってくれてるだけで、充分。

だから私のことは気にしないで？
あ、でも…」



ふぅ、と息を吐いたあと。


ひとつほしいものがあります、
と言ったA。




西「え？プレゼント！？


うん、何でも言って。
何がいいの？」



Aが俺に何かを欲しいっていうことは
今までにあっただろうか？
と驚きながら聞いた俺。




「…東京ドーム公演のチケット。」



言われてることがすぐに理解できずに



西「え、誰の？」



なんて聞いてしまう。



「もう、Nissyに決まってるでしょ。



行きます！東京ドーム！
しかも2days！

なんて…へへっ。
真似してみた。


返事すぐできなくてごめんなさい。
Nissyの初のドーム公演、見に行きたいです。」



少しふざけてみたりしてるけど、
Aにとってはきっと大きな決断だろう。




西「本当に大丈夫なの？」



「うん。


ひとりじゃないって、
言ってくれる人たちがいるから。」



そう言ったAが、
與や実彩子や、千晃と話したことを
教えてくれた。



西「あいつら…。」



胸の奥がじんと熱くなる。



「私達の周りには
素敵な人がたくさんいて…。

すごく幸せだなぁって思うよ。」



Aの穏やかな声が
耳から染み込むように響く。



西「そうだな。」




きっとAなりにいろいろ悩んで考えて
決めてだしてくれた結論。


だったらやっぱり。
最高のものを見てもらいたい。



西「俺、頑張るから。」



「楽しみにしてるね。

でも…」



西「頑張りすぎるな、だろ？」


そうです、と
Aが笑ってて、俺の頬も緩む。



Aがいないベッドは相変わらず広くて寂しい。
でも、今日はなんか、
温かい気持ちで眠りにつけそうだった。

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