歩む道。7

305 ページ5

愛する人とのキス。
最高のご褒美。


その言葉を残して、
たかは会場へ向かった。


今頃、
もうさっきみたいな甘い目をしてないだろう。
きっと、
前を見据えてアーティストの顔になってるはず。




たかが行ってしまって。
広い部屋で一人考える。




私は、マネージャーという仕事が好きだ。



表にでる西島さんをサポートして、
西島さんのやりたいことを
やりたいようにやるための
手助けができるこの仕事が好きだ。



だけど。



今の私には全力で
仕事をすることができない。



今までみたいに、
できない。




自分でコントロールできない感情、
急にやってくるフラッシュバック。



昨日の楽屋で社長や実彩子さんが
言っていたことは…、


西島さんが仕事に集中できる環境を作るには
今の私じゃだめだということ。



ならば。



これから自分がどうするのか、
ちゃんと考えなくちゃいけない。



マネージャーとしても、
私自身としても。



そう思えるようになっただけでも
私にとっては前に1歩進めたんだと思う。




そしてそう思えたのは
やっぱり〈Nissy〉のライブを
見たからなんだと思う。



彼の歌には
人を変える力がある。
勇気づけたり、
励ましたり、
元気づけたりできる。



きっとそれは、
〈Nissy〉というアーティストを
愛する人はみな、
少なからず同じようなことを
思ってるんじゃないかな。



私にこういう変化がでると思っていたのか、
偶然なのかそれはわからないけど。



やっぱりたかは。



欲しいものをくれる
魔法使いなのかもしれない。






そして私は千晃さんのマネに連絡を取り
今日の予定を再確認した。

ライブが始まって、
あの歌が始まる少し前に
関係者席に入ってもらうことになっていた。


人目につかないように出入りしてもらうのは
少し難しいけれど、
そこはAAAのスタッフが動いてくれることになっていた。


「どうか、千晃さんに届きますように。」

そう願いながら私も会場に向かった。

306→←304 side Nissy

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す