歩む道。7

340 side Nissy ページ40

離れ離れの生活も約一年弱。


お互いに、
と言うより。

Aが少しずつ、
素直に感情をだしてくれるように
なってきたように思う。


最初の頃は、
なかなか頼ってくれない事への
もどかしさを感じていた。


でも、ソロの海外ロケや新曲の準備、
グループのツアーが続く中、
俺自身も上手くタイミングを見てAに
連絡を取れずにいた。


そんななか、Aが倒れて。


無理やり鎌倉へ行って、
婚姻届をお互いに書いて。


気持ちを再確認しあって。


やっとこの距離で
うまくやれるようになってきたのかもしれない。



拓実さんの新規事業も軌道に乗り始め、
それを手伝うAも忙しい毎日を送っているようだ。


Aからのメッセージに加え、
時折、かなさんが送ってくれる
近況報告を見るたびに最近思うこと。



そろそろ、戻ってきてくれたりは
しないだろうか。



だけど、
それを口にすることはできない。



待ってる、って言ったのは俺だから。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


そして。
あっという間に2ndツアーの初日を迎え。


たくさんの課題を残したもの、
無事に幕は開いた。


明日は東京ドーム公演のことを
ファンの子たちの前で告げることになっていた。

どんなふうに話そうか、
色々考えて。
だいたいまとまったのは、
夜もだいぶ更けた時間。


寝てるだろうと思いながらも
Aに電話をかけた。



すぐに繋がる電話。




「もしもし？」



西「ごめん、寝てたよな。


こんな時間に…。
ごめん。」




「起きてたから、大丈夫。


ねぇ。
私のテレパシー、通じた？」



西「え？」



たかの声が聞きたいって、念じてたんだよ


そう言って少し笑う声。


「初日、無事に終わったんだね。


梨々花さんから連絡もらったの。
おめでとう。」



静かなホテルの部屋で、
耳に当てたスマホから
聞こえるAの声。


なんだかいつもより、
少しだけ低くて。
優しく響くような気がする。




テレパシー、だなんて
優しい嘘。


福井に入る前にも一度電話したけど、
きっと初日を終えた俺のこと
心配してたんだと思う。


西「うん…。ありがと。」




「こんな時間まで起きてて大丈夫なの？」




西「明日…
あ、もう今日か。


発表するんだ。ドームのこと。

みんなの前でどう話そうか、
考えてたんだ。」



話したいことをメモした紙と
お揃いの万年筆を眺めながら答える。




「そっか…。
みんな、きっと喜んでくれるね。」

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