歩む道。7

335 side Nissy ページ35

「もしかして録音してた？

内緒はずるい…っ…！」


頬を膨らませたAの腰に
腕を絡ませて抱き寄せる。


「宝物にするんだ。Aのピアノ。」



俺が初めてAに歌を贈ったときの
Aの返事を思い出してそう言う。



「それなら…。
私のほうが宝物、たくさん持ってる。」


俺の言葉にそう返してくれて、
何気ない会話にも二人の重ねた時間を
感じられて嬉しくなる。



「でもやっぱりずるい！

ね、たかも歌って？聴きたいな。」



西「ここで？今？」



うん、とニコニコしながら
さっきまで俺が座っていた
椅子に座ったA。
録音の準備までしてる。


西「んー。わかった。

じゃ、行くよ？」


伴奏もなしに何の歌を歌おうかと
悩んだのは一瞬。



すぐに頭に浮かんだのは、
去年歌わせてもらったあの曲だった。



息を深く吸い込む。




If I had to live my life without you near me
The days would all be empty
The nights would seem so long
With you I see forever oh so clearly



Aのいない空虚な部屋。
一人で過ごす長い夜。


だけど、
離れた場所で頑張るAを想うほど
二人の未来は明るいんだって信じられる。


Nothing's gonna change my love for you
You ought to know by now how much I love you
One thing you can be sure of
I'll never ask for more than your love
Nothing's gonna change my love for you
You ought to know by know how much I love you
The world may change my whole life through
But nothing's gonna change my love for you


どんな辛いことも苦しいことも。
Aへの想いを変えることなんかできない。
ねぇ、A？
俺がどれだけAのことが好きなのか
いい加減気づいてよ。
どんなAでも、
俺のAへの気持ちは変わらない、変えられない。
これからもずっとAを愛し続けるよ。



歌い終わった後。


「ずるい…。
やっぱり、たかはずるい。


こんなの、泣いちゃうよ…。」



ストレートな愛の歌。
照れくさいけど、重ねた俺の気持ちに
嘘はない。


椅子から立ち上がり
ぎゅっと俺に抱きついたA。


「久しぶりにたかの歌が体に染み込んだ。
ありがとう。」



西「ん。

今度またピアノ弾いたやつ、
録音して送って？

俺も宝物、増やしたい。」



「わかった。頑張る！

ビアノも…治療も。」



その言葉を聞けて、
やっぱり会いに来てよかったと
心から思った。

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