2太刀目:倒れていた人間♯ ページ4
Noside
香澄「…!大丈夫ですか?」
何時も落ち着いた様子でいる香澄も、こんな時ばかりはそうしてもいられない。
少し焦ったような様子で…すぐさま、倒れている人間のところまで駆け寄る。
水樹もそれに辺りを用心深く見渡しながら追いかけ…同じく駆け寄った。
そして、同時に息を呑む。
水樹と同じ麗しい銀色の髪に、白い肌。
この時代の様子には似合わない、戦装束のような独特の格好。
そして…そんな彼に刻まれた、痛々しく生傷と深い傷…ベッタリと衣服についた血痕。
その人間の傷があまりにも酷いもので…見ていられないものであったからである。
しかし、明らかに重傷である彼をただ見ているだけであるというのもいけない。
水樹「…香澄、其奴を寮まで運ぶ。カバン、任せた。」
香澄「あぁ、わかった。」
何やら、普通とは違う事情を感じとった水樹は救急車を呼ぶことよりも自分たちの家へ運ぶという方法を選んだ。
香澄も、その判断は正しいと思っているらしく…傷だらけの青年を背負った水樹のカバンを持ち、それに続く。
2人の平和な日常の終わりを告げるように…夜空に輝く上弦の月は怪しく光っているようにさえ見えた。
ーーーー
2人が暮らす寮の小さなキッチンに、ふわりと湯気が立ち上る。
その元は香澄が先程から40分ずっと炊いている生米。
もう既にトロトロに仕上がっており、ふわりと生姜とにんにくの香りが広がる。
鍋の前で卵をといたり、仕上げに入れるネギを刻んだりと…様々な作業を同時にこなしている香澄は後ろで倒れていた青年の手当てをしている水樹に心配そうに尋ねた。
香澄「傷の方はどうだ?」
香澄は昔から心優しい性格である為…倒れていた青年のことを本当に心配しているらしい。
脈があることを確認出来たものの、青年が死 んだりしないかと怯えているようだった。
水樹はそんな香澄を安心させるように、何時もの調子で言う。
水樹「…大丈夫だ。深い傷の所為で発熱はあるが…血は止まっている。命に別状はないだろう。」
それに、心底安心したように香澄は微笑み…倒れていた青年が目覚めた時、食べられるようにと用意している中華粥の完成を急いだ。
ーーー故に、気づかなかった。
水樹「…此奴は人間じゃない、からな。」
水樹だけが気付いている…とある事実に。
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ