海水に溺れて【YouTuber中短編集】

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『うわ寒。嘘でしょくそ寒い』

なぜ私はタイツなど履いているのだ。めちゃくちゃ寒いではないか。

『良かった、家近くて』

コートのポケットに手を突っ込み、暗い夜道を歩く。街灯がないのはちょっと迷惑だけど、慣れたので怖くはない。

コツコツという音と、後ろから普通の音が聞こえてきた。そこからぞっとして、少し恐怖心が増した。

『(今さら着けてくる人なんていないでしょ…)』

早歩きをすれば後ろも早歩き、走れば後ろも走る。振り向きたい気持ちもあるけど、恐怖心が勝っていた。

そしてついに…

「みーっけ」
『！！』

背後から口を覆われ、声が出せなかった。
ああ、私も終わりか…短い人生だったわ。

「久しぶり」
『お前かよ！』
「い"ったぁっ！なんで俺だけ！」
「ちょ、むりむり！いっ…！」

壁に手をついてかがみ込む男性２名。ものすごく顔見知りだった。

「ごめんて…」
『何でここにいるの』
「動画の買い出し」
『ふーん。ばいばい』

待った！とか大きい声を出して着いてくるのは、あの人気グループYouTuber・東海オンエアの青担当と緑担当。りょうととしみつだった。

「お詫びに送ります(笑)」
『結構』
「だめだって、ここ人通り少ないじゃん」

また溜息をつくと、ふたりは私の両隣に来て歩いた。首痛い。見上げないとダメじゃん。

『小柳津は？』
「じゃんけん買ったから家にいるよ」
「りょうが負けるなんてなー」
「俺だって負けるし(笑)」

お願いだから頭上でわからない会話をしないで欲しい。あの適当男みたいに付いていけるタイプではない。

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