海水に溺れて【YouTuber中短編集】 (ページ31)

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「やっほ〜」
「ここにいたんだ」

数分後、ツリメとりっくんが屋上に来た。

「食べてた？」
「授業終わんの遅かったからまだ大丈夫」
「何かあったの？」
「俺じゃなくて、そら」

えいちゃんは俺を指さして、二人の視線をこっちに寄せた。

「あのさ、前髪が長い黒髪ロングの女の子知ってる？」

俺がそう聞くと、二人は首を傾げて顔を見合わせた。

「前髪が長くて…」
「黒髪ロング…」
「「あっ」」

さっきのえいちゃんみたいに声をあげると、俺の方を見た。

「多分、(人1)さんじゃない？」
「(人1)さん？」
「うん。(人1)Aさん」

えいちゃん知ってる？の視線をえいちゃんに向けると、えいちゃんは小さく頷いた。そしてゆっくり口を開く。

「"いじめを受けている生徒"、だよ」
「いじめ…？」
「そう。まあちょっとした噂を小耳に挟んだだけだけど。知ってる人は知ってるんじゃない？」
「俺知らなかった…」
「俺も…」

えいちゃんはゴミを袋に突っ込んで立ち上がった。

「先生すらも知らない。一部の生徒が知ってる話だよ」
「一部の生徒…？」
「この学校には、マニアックな秘密部活がある。＿＿＿その名も"School Secret Club"」
「スクール、シークレット」
「俺も最初聞いた時ダッセェ名前だなって思ったよ。でも、結構いろんなこと知ってるんだよ、あいつら」

ツリメとりっくんが「ふーん」と興味なさげに言った。

「そらは雑誌とか見ないの？」
「あんまり…」
「あるファッション雑誌で有名だったモデル・Aは、その(人1)Aさんだよ」
「えっ！？うそ！？」
「流石にそれはみんな知ってたか」
「てか、えいちゃんなんでそんなに知ってるの？」

りっくんの言葉から一気にえいちゃんへ視線が注がれる。

「"友達になったふり"したから」
「…」
「並べば分かるけどは、(人1)さんは背が高いんだよ。東京から来たことはツリメたちは知ってるでしょ？モデル活動してたのはここに来る前。それに妬んだその辺の女子とか女の先輩が(人1)さんをいじめてるってわけ」

なんて胸糞悪い話なんだ、と思った。えいちゃんはポケットに手を突っ込んで立ちっぱなしだった。

「前髪長くて見えないけど、なかなかの美人らしいよ」
「へぇ…」
「でもさ、教室でいじめられてるのなんか見たことないよ？」
「陰でやってんだろ」

えいちゃんの話を聞いていたとき、あの子がものすごい気がかりだった。

(人1)Aさんという人が。