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『おいしかったぁ』
「そして暑い」
『やっぱ動きたくなかった』
車で来るべきだったか、と後悔しても遅い。電車に乗ってきたわけだし、今更ってところだろう。
「怖いの苦手?」
『いや?』
「苦手でいてよそこは」
『実際にいたら怖いよね』
「Aなら戦えそう」
『ちょっとそれどういう意味よ』
カフェで散々喋ったくせにまた喋り出す俺たちは、もう少しで映画館に着くところだった。
「…なんか、変だね、あの人」
『うん…』
残り数十mというところで、目の前を夏なのにフードを被ってふらふらしている男が歩いてきた。ほんとお酒でも飲んだみたいにふらふらしていた。
でも、それは一瞬だった。
『りっくん!!!』
というAの大声と同時に、赤い液体が宙を舞っていた。スローモーションに見えた。自分たちの後ろでも悲鳴と呻き声が聞こえた。断末魔に近い、叫び声。
「…え?…なに、なにが…」
気付いたら周りの人がみんな血だらけになって倒れていた。その場で起き上がっていたのは俺だけだった。
「A!?」
『ぅ、ぐっ…』
腰のあたりで覆いかぶさっていたのは紛れもないAで、背中には鋭利な刃物で切られたであろう深い切傷があった。赤黒くて、見ていられないくらい深く傷を負っていた。
「Aっ、どうして!なんで俺なんかを庇ったの…!?」
『っ…げほっ、』
さっきの男は通り魔だったんだ。ニュースで話題になっていた、あの殺人鬼だった。未だ捕まってなかった通り魔が、たまたまこの場所にいてしまった。
『りっ、くん…ケガ……は、』
「してない!してないよ…!だからっ、…喋らないでっ…」
『ふ……よかっ、た』
「A…?」
またスローモーションに見える。遠くで白いてTシャツを着た男の人の声が聞こえた。走ってくる。俺に話しかけてる…?
。
「りっくん、りっくん!」
「!」
目を覚ますと、ツリメが心配そうな顔で俺を見ていた。
「つりめ…おれ…」
「だいぶ
また夢を見ていた。あの時の夢だ。一時も忘れることの出来ない、あの光景。
「ごめん、ちょっと…」
「うん…」
じっとりと汗をかいていたため、洗面所でTシャツを脱いで別のに着替えた。
「…A」
あの時俺を庇って通り魔に殺されたAの顔が脳裏に張り付いていた。
「俺が守ってあげたかった、1回でも多く、」
「ごめん、」
後悔しても遅いことなんて、知ってるのに。
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あやもち(新アカウント)(プロフ) - リンさん» ちょっと違う気がしますがありがとうございました! (2018年1月20日 22時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
リン - ありがとうございました。面白かったです。 (2018年1月20日 22時) (レス) id: da57983ead (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - ありがとうございます!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
あやもち(新アカウント)(プロフ) - 未来さん» 了解です! (2018年1月20日 21時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - りょうくんとイチャイチャするシチュエーションってお願いできますか?? (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやもち(新アカウント) | 作者ホームページ:https://twitter.com/avntis_TO_mizu
作成日時:2017年11月17日 14時