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「ほらこれ、駅前のプリン」
『駅前の!?わぁ…!やったー!』
「子供か(笑)」
病院に行く前に駅前で買ってきたプリンを渡すと、子供みたいに目を輝かせているA。
『久しぶりだぁ』
「…そっか」
『えいちゃんがこうして持ってきてくれないと食べれないから、ありがとう』
「どういたしまして」
うん、と返事を返すと、早速箱を開けてプリンを二つ取り出し、ひとつ俺の前に差し出した。
「いいよ、Aが食べなよ」
『だめ。一緒に食べる』
「ええ…わかったよ」
Aは本当に表情が豊かだと思う。嬉しい時とか楽しい時とかも笑うし、怒ることもある。
ただ、泣いているところは見たことがなかった。それは付き合い始めてから一度も。
『おいひい』
「よかった」
ひとくちプリンを口に運ぶと、ほんのり苦いカラメルとプリンが口いっぱいに広がった。甘すぎなくて、すごく美味しい。
『えいちゃん天才かようま…』
「俺作ったんじゃねえよ(笑)」
『知ってる(笑)』
「それも知ってた」
『んふふっ』
ふたりで一つずつ食べ、残りはご飯のあと食べるというから冷蔵庫に閉まった。冷蔵庫閉めたあとも、ニコニコっていうかニヤニヤしていた。
「ぶす」
『ひょれかいにもかのじょのまえでいう?(それ仮にも彼女の前で言う?)』
その言葉が可笑しくてさらに笑ったら、拗ねられた。
。
「ねえA、病気治ったらさ、ふたりで旅行行こっか」
『旅行?』
「うん。行きたいところ行こう。海外でもどこでも、行けるところ」
『宇宙(笑)』
「ばか(笑)」
Aは目を細めて頷いた。最近また痩せたんじゃないかって思った。すっかり細くなった体を抱き締めると、負けじと思いっきり抱き締めてくれた。
「治るよ」
『うん』
「また動画出てね」
『もちろん』
外を見れば、すっかり夕方だった。そろそろ帰らないと。
「今日お母さんくるの?」
『昨日来てくれたから今日は来ないかも』
「寂しい?」
ちょっと、と苦笑いする。
Aの両親はAが小さい頃に離婚して、Aはお母さんに育てられた。しっかり働いて、Aを支えてくれている。
『お母さんのためにも、働けるようにならないと』
「俺も支えるよ」
『うん!』
椅子から立ち上がり、病室の扉に手を掛けてAの方を振り向くと、ひらひら手を振っていた。それに手を振り返し、俺は病室をあとにした。
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あやもち(新アカウント)(プロフ) - リンさん» ちょっと違う気がしますがありがとうございました! (2018年1月20日 22時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
リン - ありがとうございました。面白かったです。 (2018年1月20日 22時) (レス) id: da57983ead (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - ありがとうございます!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
あやもち(新アカウント)(プロフ) - 未来さん» 了解です! (2018年1月20日 21時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - りょうくんとイチャイチャするシチュエーションってお願いできますか?? (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやもち(新アカウント) | 作者ホームページ:https://twitter.com/avntis_TO_mizu
作成日時:2017年11月17日 14時