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全てが夢だと言って欲しかった。
目を覚ましたその日から僕の人生は地獄となった。
村の人々は親切で、僕に対して深く同情をしてくれた。
村長なんて、目を覚ましたその日に、村の皆で僕を育てていくから大丈夫だと、大粒の涙を流し約束をしてくれたほどだ。
それでも、人生は地獄となった。
家を、兄弟を、帰る場所を一日にして失くしてしまったのだ。
頻繁に夕飯に誘ってくれる町の牛乳屋のマーサーおばさんも、広い一人部屋を用意してくれた村長も、僕が泣かないように心配して遊びに誘ってくる近所の子供たちも皆大好きだったが、どれだけ一緒に過ごそうとも彼らは僕の家族ではないのだ。
時間が経てば、全身の火傷は治っていったが、心の傷はかえって悪化の一方だった。
常に胸が痛く、何も考えていなくたって涙が止まらないのだ。
夜は毎日のように悪夢をみた。
精神が限界を迎えていたのだと思う。
ある日の夜中に、僕は村長の家を抜け出して協会に向かった。
村の皆が、決して僕が協会の跡地に近付けないようにしていたのは知っていた。
あの残酷な夜を思い出すからだと、彼らは思っていたのだろう。
だがそれは勘違いだ。
僕はその焼け跡を見なくてはならない。それを見ない限り僕は不在の本質を受け入れることすら出来ない。
喪失と絶望の先の未来を見るには、僕は黒焦げだろうと、なんだろうと、あの家の現在の姿を見なくてはならないのだ。
窓から飛び出して。裸足のまま協会に向かった。
月の夜だった。
真っ暗で何の音もしないから、何度も歩いた道がまるで、初めて通る道のように思えた。
◇
協会には何も残ってなかった。
本当に何もだ。
柱も、大理石の石像も、十字架も、なにもかも。
そこは全てが焼き付くされていて、ただ、何かがあったんだと、ものが焼けた匂いと、月の光さえ通さない漆黒の煤の山だけが残っていた。
あぁ、本当になにもかもが、なくなったんだ。
無意識に膝をつき、その漆黒の煤を眺めた。
なんにも残っていない。
僕達がいた形跡は全てなくなったんだ。
◇
どれくらいそうしていただろうか。
ふと、白い光が見えた。
吸い寄せられるように視線を動かせばそれが、白い、スカートの裾だと分かった。
「ねぇさん!」
考える前にそう叫んでいた。
顔を上げた先にあったのは、何度も夢でみたAねぇさん。
に、酷似したなにかだった。
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カンナ(プロフ) - お返事ありがとうございます!嬉しいです、、応援してます!これからも楽しみに読んでいきます! (3月28日 3時) (レス) id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - カンナさん» カンナさん、コメントありがとうございます。 お待たせして申し訳ありません。part2やっと終わりました。part3は少しでも更新頻度を上げれるよう頑張りますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月26日 0時) (レス) id: 7bf5456e4c (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 素晴らしすぎる作品に出会えました、、、この出会いに感謝しかないです.お忙しいとは思いますが、無理ない程度に更新していただけると全わたしが歓喜します。応援してます! (3月18日 10時) (レス) @page46 id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - 天音さん» 天音さん、コメントありがとうございます。お待たせして申し訳ありません、ストーリーはまだまだ続きますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月9日 21時) (レス) @page46 id: 172db88909 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - とても素晴らしい作品に出会えたことに感動してコメントを残したくなりました。読んでいて時間を忘れるほどに面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (8月28日 20時) (レス) id: 2158ec844c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやこ | 作成日時:2018年11月13日 23時