過去71 ページ24
ユディ
先程探していた執事が執事邸の裏からこちらに駆け寄ってきた。
ユディはかつてお転婆が過ぎ頻繁に迷子になる私に父が付けた下女だ。焦げ茶色の癖毛が特徴で、手先が器用で工作が上手い。よく人形の為の家やその家具を作って貰っていた。久しぶりにみたその顔には皺がいくつか増えていた。
「ええ、あなた様に再び会えたので」
「そう、なら良かった。あなたに頼みたい事があってね、ここだと話しにくいから、降りるまでの道で話すわ、付いてきて」
「承知しました」
じゃあねと、執事達に再び挨拶をし、ユディを連れて山を下る。
少し歩いた場所で一度立ち止まり、ユディを見つめる。
「ねぇ、今でも私のために命を使える?」
そう問えば一瞬で答えは帰って来た。
「勿論です」
「そう……じゃあお父さんを裏切れる?」
「……それは」
ユディの伏せられた目を見つめる、意地悪をした自覚があるのでわざと明るい声を出した。
「冗談よ、あなたが誠実で安心したわ
……ユディ、イルミを見張って」
バチリと開いた茶色の瞳が向けられる
「そして、気になる行動があったら私に伝えて」
「承知しました
……失礼ながら理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ、まぁ、ただ心配なだけだよ」
「イルミ様が?」
「どちらかと言えばキルア
あの子これから苦労しそうだからね、お父さんとお母さん、それからイルミからの期待でね」
まぁ、全部私のせいなんだけど。
その言葉は口から出ないようにギリギリで飲み込んだ。
自己満足だ、こんなことをユディに頼んだところでキルアを取り巻く環境が良くなることはないだろう。それこそ私が私が家を継ぐという責任を背負わない限り。
卑怯者。
使命も責任も罪も何も背負いたく無い腰抜けが罪悪感を減らす為に他人を利用するなんて。
「勿論です」
恭しく下げられた頭と、懐かしく響く声で我に返った。
「うん、良かった、お願いねユディ」
ズギズギと痛む胸を誤魔化すかのように、ユディにじゃあねと微笑み、別れた。
そんなに長い時間話し込んでいた感覚はなかったが顔を上げると目の前には試しの門が堂々とそびえ立っていた。
◇
冷たい門に手を当て、力を込めて押すと、唸るような音を立てて門は開いた。
一歩外に出ると、朝日が顔にかかって眩しい。
Aは、真っ直ぐな足取りで敷地を出た。
519人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カンナ(プロフ) - お返事ありがとうございます!嬉しいです、、応援してます!これからも楽しみに読んでいきます! (3月28日 3時) (レス) id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - カンナさん» カンナさん、コメントありがとうございます。 お待たせして申し訳ありません。part2やっと終わりました。part3は少しでも更新頻度を上げれるよう頑張りますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月26日 0時) (レス) id: 7bf5456e4c (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 素晴らしすぎる作品に出会えました、、、この出会いに感謝しかないです.お忙しいとは思いますが、無理ない程度に更新していただけると全わたしが歓喜します。応援してます! (3月18日 10時) (レス) @page46 id: fc7530e511 (このIDを非表示/違反報告)
あやこ(プロフ) - 天音さん» 天音さん、コメントありがとうございます。お待たせして申し訳ありません、ストーリーはまだまだ続きますので、是非最後までよろしくお願いします。 (3月9日 21時) (レス) @page46 id: 172db88909 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - とても素晴らしい作品に出会えたことに感動してコメントを残したくなりました。読んでいて時間を忘れるほどに面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (8月28日 20時) (レス) id: 2158ec844c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あやこ | 作成日時:2018年11月13日 23時