『インモラル』

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「あの、帰る前にちょっとお手洗いに行ってきてもいいですか？」

「ああ、そうだね。渋滞するかもしれないし」

「渋滞？」

「うん。日曜日のこの時間は国道混むから」

てことはその分長く藤ヶ谷さんと一緒にいれるんだ。

やったぁ。

「…何で嬉しそうなの？」

「えっ？や、違います！別に嬉しくないです！」

「そう？」

いけない。すぐに顔に出るタイプだから気をつけないと。

お手洗いに行き、洗面台でメイクを直した。

…もう少し可愛い格好してくれば良かった。

でもとりあえずスカート穿いてて良かった。

トイレを済ませてお手洗いから出て、ベンチに座ってる藤ヶ谷さんの元へ駆け寄ると、私に気づいた藤ヶ谷さんが立ち上がっていきなり私を引き寄せた。

えっ？何？

藤ヶ谷さんは私の後ろにまわって耳元で「あのさ…」って小声で囁いた。

それだけで身体は痺れ、触れられてる肩は熱を持つ。

「スカートが…下着に入っちゃってる」

え？！

下を見ると、スカートの裾が下着に入っていた。

藤ヶ谷さんが隠してくれてるから慌てて直した。

「ご、ごめんなさい…」

「いや…」

藤ヶ谷さんを見上げると、目を反らされてしまった。

幻滅されたかも。最悪。

「くっ…」

ん？

藤ヶ谷さんを見ると笑いをこらえている。

「…笑いたいなら笑ってください」

「ぶっ、…ごめん。でもさ、笑うとAちゃん怒りそうだし」

「もう怒ってますっ！」

「あははは」

藤ヶ谷さんの胸板をグーで軽く何度か叩くと、「痛い痛い」って笑う藤ヶ谷さん。

じゃれあうのが楽しくて続けてると、藤ヶ谷さんに両手首を掴まれた。

「しつこいよ」

至近距離で言われてかぁっと赤くなった。

「やんちゃなのは北山と一緒だね」

私の動きが止まると手首を離して、「じゃあ帰ろうか」と藤ヶ谷さんが優しく笑った。

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