『インモラル』

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結局、土曜日以来みっくんから藤ヶ谷さんの話はでなくて、渡したいものが何かすらわからなかった。

お店に来ないかなとも思ったけど、前の担当さんは１ヶ月に一回くらいのペースだったから、藤ヶ谷さんもまだ当分は来ないんだと思う。

でもそれで良かったとも思った。

少し密に関わりすぎたからときめいてしまったんだし、こうして時間が経てば気持ちも落ち着いていくかもしれない。




仕事の休憩時間に、今井さんに絵本のワークショップがあると聞かされた。

「年齢別のおすすめの絵本を読み聞かせしたり、工作したり。あと絵本に出てくるお菓子を作るコーナーもあるみたいよ。行ってみたら？」

「へ〜、面白そうですね。でもみんな子連れで来てそう…」

「旦那と一緒に行ったらいいんじゃないの？金土日やってるし」

みっくん、嫌がりそう。

「聞いてみます」

今井さんからチラシを受け取った。




「ただいま」

帰ってきたみっくんを玄関にお出迎えに行った。

「おかえりなさい」

みっくん、少し機嫌悪そう。

聞きづらいなぁ。

「今ご飯あっためるね」

「あ〜悪い、食ってきた」

え〜。もう。連絡くらいしてよ。

「膨れっ面すんなよ」

「今日、みっくんの好きなのばっか作ったのに」

「マジで？なら少し食べよっかな」

「無理しなくていいよ」

ヤバイ、ちょっと言い方キツくなっちゃった。

けどみっくんは怒らずに、私を後ろから抱きしめた。

「ごめんって。食べてくる時は今度からちゃんと連絡すっから」

珍しく謝るみっくん。

「だから許して？Aちゃん」

久々にAちゃんって言われてくすぐったい。

今なら言いやすいかも。

「みっくん、私日曜日に行きたいとこがあるんだけど…」

「ん〜？いいよ、どこ？」

「ここ。職場の人にチラシもらったんだけど、一人じゃ行きづらくて…」

チラシを見せると、なぜかみっくんは目を見開いて固まった。

「みっくん？」

「これ、ほんとに職場の人にもらったのか？」

「うん」

「…行かない」

チラシを返されてしまう。

「興味ねえし。つまんなさそう。こんなん子どもいない俺らなんか場違いだろ」

「…やっぱりそうだよね」

私がそう言うとみっくんは「だろ？」って安心したように笑った。

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