溺愛ロジック F side

北山の涙 ページ38

死ぬ時には走馬灯のように思い出が駆け巡るというけれど、俺が落ちていく時頭に浮かんだのは、Aの笑顔だった。

こんな色のない世界に既に未練なんてなかった俺は助かってしまったことが残念で、見舞いに来てくれた北山につい本音をさらけ出すと、アイツは口をぽかんと開けたまま涙を一筋流した。

…変な泣き顔。

そのあとアイツは「勝手に死ぬなんて許さん」だの「死んだら一生呪ってやる」だの言い出した。

呪うのって普通死んだほうじゃないの？

死んだ人を呪うことって出来んの？

…って、このずれた思考、Aみたいだよな(笑)

北山はリンゴを剥きながらブツブツ文句を言い出す。

「女なんか星の数ほどいんじゃん。お前レベルの男があんな小娘に振られたくらいで死ぬんじゃねぇ。つか広瀬よりレベル高い女なんて腐るほどいるわ！アイツ、料理出来ないわアホだわ天然だわ…まあそんなとこが可愛いんだけどさ。って、違う！！」

「ふっ」

「振られたモン同士、合コンでも行こうぜ！」

「じゃあAみたいな子連れて来て」

「…お前なぁ」

「冗談だよ。もうちゃんと諦めてるから…大丈夫」

君を解放するよ。

縛りつけてごめん。




北山が、自分が下から手を振ったせいで俺が屋上から足を滑らせて落ちたと警察や学校に説明した。

話せる状態ではなかったAは来ず、玉森が警察に北山の証言を証明したらしい。

このまま学校も辞めてしまおうと思っていたのに、「藤ヶ谷先生が辞めたらますます怪しまれるじゃないですか！！」なんて教頭が涙ながらに言うもんだから憐れになって残ることにした。



退院して学校に戻ると、意外にもみんなすんなりと滑らせたという嘘を信じたようだった。

「先生みたいな人が自 殺するわけがないじゃんね」

「俺、先生が足を滑らせて落ちたって聞いて、意外に抜けてんだなって親近感沸いた(笑)」

「俺が先生だったらこんなに女子にチヤホヤされてんのに死ぬわけねぇ」

…北山のせいで俺は意外にドジな先生という新たなレッテルを貼られてしまった。

それでも今まで通りでいられるのは北山のおかげだ。



気になることはただ一つだけ。




A、笑えてる？

その後→←ハッピーエンド

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