溺愛ロジック F side

カウントダウン ページ34

卒業式の前日の夜。

明日、すべてが決まる。

…この期に及んで何を期待してるというのだろう。

それでも彼女なら俺の嘘を赦してくれるかもしれない。

そんなことは有り得ないのに。

嘘の関係を教えられ、身体まで重ねて。

実は恋人は違う人で。

その恋人を裏切り続けさせられたんだ。

こんな非道な俺のしたことはもう血の通う人間がすることとは思えない。

誰がそんなやつを受け入れられるというんだ。

暗い寝室に入り、祈るように目を閉じた。

けれどなかなか眠りにつけなかった。

朝が早く来て欲しい。

暗闇に呑み込まれてしまいそうだ。




夢を見た。

目の前には愛しいA。

もちろん笑顔はない。

ただ、君が好きだっただけなんだ。

歪んだ表現になってしまったけれど。

ちゃんと愛してたよ。

けれど愛の言葉は彼女には届かない。

静かに首を横に振るA。

笑ってよ。

俺に背を向けるA。向こうには玉森。

夢ですら俺を選んでくれないんだね、Aは。

そんな不安げな顔して見ないで。

大丈夫だから。

ちゃんと祝福するつもりだよ。俺なりに。



目が覚めた時の虚しさ。

身体が鉛を背負ったかのように重い。

校門で登校してくる生徒の相手をしていると玉森が走ってきた。

俺に気づくと立ち止まり、何か喋った。
少し離れた位置にいる玉森の声は、周りに群がる生徒の声にかき消されてしまう。
口元をじっと見つめていると、玉森が蔑むように笑った。


卒業式が終わり、クラスに帰ると生徒達から「ありがとう」と言われた。
Aもみんなと一緒になって笑顔で俺を見ている。

ねぇ、A。
やっと俺に微笑んでくれたね。
泣きたくなるくらい嬉しい。

俺のほうこそありがとう、A。

少しの間だったけれど、とても幸せだったよ。

これから先も君の未来は輝かしく、笑顔に溢れたものになるんだろうね。

傍で見届けたかったけど。それは無理みたいだから。

だから願わせて。君の幸せを。



さよならまで、あと少し。

愛しい君の最後の姿をしっかりとこの瞳に焼きつけておくよ。

幸せになる権利なんかはじめからもっていなかった俺だけど、君との思い出があればちっとも淋しくなんかないから。

自分を傷つけてでも→←敗北

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