溺愛ロジック F side

罠 ページ12

最後の旅行にすべてを賭けていた。

これが最後の二人で会う機会だから。

準備を少しずつ進めていく。

もし思いとどまることがあっても大丈夫なように必要最低限しかできないけれど。

そして、その計画があるからか心はとても穏やかで。

玉森のことも、北山のことも、もうどうでも良かった。

だけど俺の態度が変わったことによって、なぜかAのあの冷たかった瞳が少し暖かみを帯びていく。

彼女自身が、自分の意思で俺のところに来たり、旅行雑誌を買ったと言ったり。

もしかして、少し離れてこうやって接すれば俺のこと好きになってくれるんだろうか。

淡い期待をしてしまうも、やはり計画をやめる気にはなれなかった。



そして、それと同じ時期、北山に手紙が届くようになった。

内容は『助けて』と書いてあるだけ。

赴任してから、こういう陰湿なことに遭遇したことがない北山は動揺していた。

単なるいたずらだろ。やり口が幼稚だし、生徒に間違いない。

それでも真摯に考えようとする北山はやっぱり真面目ないい教師だと思った。

…まてよ、この手紙、使えるかもしれない。

北山がクラスのごたごたに手を焼けば、これから追い詰められていくAにそこまで構っていられなくなり、俺にとっては都合がいい。

まずは北山の生徒からの信頼を無くすことからだ。

北山のクラスの生徒達からの信頼もある俺はもちろん裏サイトのことも知っていた。

さすがにパスワードまではわからなかったけど、少しいじれば難なく見ることができた。

北山に二階堂にけしかけるように促したのと同じ日の夜、裏サイトで二階堂の書き込みとして、二階堂の親友の知られたくない情報の一部を明かした。

北山が知っててもおかしくないくらいの浅いものだったけど、親友の裏切りは偉大だったようで、案の定揉めた。

書き込みをした覚えのない二階堂は多分北山を疑うだろう。

二階堂の北山を見る目が敵意のあるものに変わった。

玉森と同じでクラスの中心人物の二階堂は、玉森ほどではないけど影響力があり、二階堂によって北山の立場は勝手に危ういものになっていくだろう。

北山のことだから二階堂が心配になってそっちに集中するはずだ。

だけど事態は思わぬ方向へ進んでいった。

親友という名の邪魔者→←君の笑顔

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