危うい誤解 ページ8
＜東谷目線＞
さて、どうしたら良いのだろうか。
私がした事。それは先ず勇作に銃を依り代にしてもらう事だ。一応、移り変われる感じにしておいた。説得は意外と簡単で、すんなり依り代を移してくれた。
問題は尾形の方だった。いや、尾形に処置をしようとした時間だろうか。
私が尾形に対して処置を行うためには、上半身を脱がし、法を唱えながら念じると言うかなり面倒な事をしなくてはならないのだ。これは保険的な意味でするので、必須と言われたらそこまで必要ではない、と答える程度だ。
なので服を脱がし、早速取り掛かろう、と彼の胸辺りに手を置いた矢先…
「無事かッ、東谷!!」
と言う声がしたと思ったら扉が勢い良く開けられていて、そちらを見てしまう。
すると右手に拳銃を持った月島軍曹が焦った様子で私を見ているじゃないか。
「どうしたのよ…」
若干、いや、相当驚いていた私が振り絞った言葉がこれだけである。月島軍曹は、周囲に警戒をした状態で周囲を見渡すと、尾形を見たのだろう。小さな沈黙がその場を支配する。
驚いていた私は、ハッ、と気付いても遅い。
考えてみて欲しい。診察すると言って部屋に入り、見てみれば上半身裸となっている意識不明の上等兵。脱がしたと思われる女こと私は、その男の胸辺りに手を置いている。そして『どうしたの?』と言う。
状況が状況の為、月島軍曹はきっとその言葉を『(これからお楽しみだったのに)どうしたの?』と責めるような意味で受け取ってしまうだろう
「貴様だったのかッ!随分な役者ぶりだったな!」
「ちょ、どういうことよ!?」
「答える義理はない、今ここで、その腐れ切った精神…叩き直してやるっ!」
月島軍曹は、拳銃を投げ捨て、此方に向かってくる。距離を詰められれば先ずは私に右横打を打ち込む。狙いは右肝臓、そこにえぐり混む様に拳が入れば、女の身体だ、壁に叩き付けられてしまう。
ゴホゴホ、と咳き込み、苦しさと痛さを強制的に味わらされていると、壁に叩き付けられ、半ば座っていた私に、追い討ちばかりに左揚げ足蹴りを。その勢いで右正面の殴り。それは流石に不味いので、咄嗟に腕を顔の前で合わせ、威力の軽減と防御を。結果は成功。
しかし、痛いものは痛い。きっと何か誤解しているのだ。急がなければ、殺られる…!
ここで、一人旅をしていた時にかじった護身術が火を吹く。
勝てない相手に抗ってみせようか
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
