とは言え、戦友よ ページ37
＜杉本目線＞
アシリパさんとキロランケと無事合流出来たのは嬉かった。でも、札幌での一件で死んでいて欲しかった牛山や、かつて一度、俺らを襲った第七師団の尾形に、謎の女である東谷が来るのは予想外だった。
何より、尾形と東谷はまるで恋仲であると言わんばかりに距離が近い。少女世界で言う禁断の恋……！？いや、流石にこの状況を少女世界風に置き換えるのは駄目だろう。
何にせよ、俺らはもう一度夕張の剥製屋に辿り着き、白石が鶴見中尉の剥製を持ってきていた部屋に行く。
｢尾形、本当に何処に居たの？｣
｢……｣
｢答えないと本当に椎茸を口にぶち込むわよ｣
｢………この剥製屋に居た｣
？？？
飼い慣らされてるのか、何なのか。と言うより尾形って椎茸嫌いなの？イメージ付き難ｯ！
てか、尾形も剥製屋に居たって事は、白石のあの鋭い‘偽物の刺青人皮’ってのは尾形が言わせたんだな。少しは見直したのに…。
部屋には上半身の皮を剥がれた人間の剥製があり、おぞましい存在感を発していた。
｢やだ怖ぁい…｣
｢偽物の刺青人皮は、この六体の剥製から作られたに違いない｣
｢そして、月島軍曹は屈強な兵士だ。坑道から死体が出てこなければ六枚の偽物が出回った、と考えて良いだろう｣
各々に緊迫した空気が流れる。
ふと、背後に何者かの気配が近付いている事に気付いた。俺が背後を振り替えると同時に、その何者かは喋りだした。
｢偽物か、本物か……｣
｢‘これ’を確める術を探さねばならないな｣
そこに居たのは老いぼれた男。でも、何処かで会った事ある気がするんだよなぁ……なんだろ、特にこの並ならぬ‘目’に覚えがある。誰だったかなぁ…、思い出さない俺は素直に
｢ジイさん、アンタ何処かで会った事無かったか？｣
と、聞いた。すると白石は焦った様子で語る。
｢そんな筈はねぇ！こいつァ土方歳三だぞ！？｣
｢成程、アンタが土方歳三か…アンタに会ったら、ずっと聞きたい事が合ったんだ｣
｢網走で、のっぺらぼうに、アイヌの独立戦争を持ち掛けられなかったか？ってな｣
今までの、アシリパさんの話と白石の話、キロランケの話から考え抜いた事を話していく。すると、土方はフッ、と笑うとその考えが正解であることを証明するかの如く小さく誉めた。
｢あら、どうしてここに土方が居るの？｣
そして、ｷｮﾄﾝ、とした声が流れるのもそんなに時間が必要なかった。声の主を見ると、そこには何かしら作業していたと思える東谷が立っていた。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
