ﾕｳﾊﾞﾘﾀｲｯ!!!! ページ35
＜東谷目線＞
｢北海道に来てからまともに観光したことなかったのよねぇ…｣
｢おいおい、嬢ちゃん。ここには観光で来たんじゃねぇぞ｣
分かってはいるが、少しくらい羽目を外したいものだ。北海道に来てからロクな目に合ってこなかったし、旅の筈が何か大事に巻き込まれたりして大変だったんだ。ちょっとは観光気分でも良いではないか。
｢牛山も少しくらい、小遣い…ちょろまかしても良いんじゃない？｣
｢……少しくらいなら、回って行くか｣
｢よっし！尾形もどう？…って、あれ｣
｢尾形がどこにも居ないわよ！？｣
｢本当じゃねぇか！！あの野郎、どこに行きやがった！！｣
いつの間にか尾形が消え、その場に取り残されたのは私と牛山。まぁ、尾形の事だ。私の低俗(と思いたくはない)会話に飽きたか、興味を引くものがあったのか、別行動したと言うことだろう。いつか帰ってくる筈だ。
｢…まぁ、まずは刺青人皮を探すわよ｣
半ば呆れて物も言えない牛山と共に町へ行く。
夕張は、炭鉱で仕事をする人間が多い。故に事故も多く、毎年死者が多数出ている事で有名だ。地方では夕張の煙突から出てくる煙が二又に割れていたら、事故が起こる、とまで言われる程である。けれども活気はあり、炭鉱夫も細心の注意を払っているのだろう。残念ながら遊郭はあまりない(牛山談)
私達が聞き込みをしていて、どのくらいの時間が経っただろうか？ふと、牛山が
｢ん？ありゃぁ…｣
と、何かに気付いた様子を見せたので私が何を見たのかと聞くと、牛山が知り合いだ、と答えた。牛山の知り合いと言うと、私の中では柔道仲間等しか浮かんでこない。
｢チンポ先生、なんて呼ばれてたなぁ｣
｢ちょっと何言ってるか分からないわ｣
聞かなかった事にした。
牛山が見てる先って炭鉱の入口だ。つまり、炭鉱夫に知り合いが居たのか？と思い耽っていると地面が、山が大きく揺れた感覚に襲われる。
そう、炭鉱での事故だ。
『今のは相当大きいぞ！』
『入口から煙が出てるっ！葉っぱがガス溜まりを当てちまったに違ぇねぇ！！』
『急いで塞がねぇと不味いぞっ』
炭鉱夫達が騒いでいて、状況が混乱しているのだけが良く分かった。あれ？牛山の知り合いってさっき炭鉱に入ってなかった？
｢少し出てくる｣
｢…程々にね？｣
牛山がスーツを整えて歩き出すので、私は適当に言葉を投げる。牛山は応！と答えると塞がれた入口を叩き壊して、男二人を肩に乗せて帰って来た。
いや、なんだこの絵面……。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
