[閑話]土方さん家の日常 ページ32
初日〜
｢部屋ってどうするの？｣
｢そりゃお前…女が男と二人で居たら襲われるぞ｣
｢ジジィと一緒に居りゃあ、枯れてるから大丈夫だろ｣
東谷はふと呟く。それは牛山が拾い、尾形が軽口含めて意見を述べる。この男はいつも一言多いのだ。
｢では、私と一緒はどうでしょうか？｣
｢全力で御断りさせて頂きます｣
｢同物同治の信仰者に仕事道具である目を食べられたらたまったもんじゃないわ｣
｢しかし、一人一部屋なんて出来る訳ないぞ｣
家永が東谷を誘うが、東谷は即座に断る。そこに永倉が暗にワガママばっかりは駄目だと伝える。
｢こうなりゃくじ引きしかねぇだろ｣
｢随分と幼稚な方法だなぁ、不敗の牛山なる人間がくじ引き……ははぁ｣
｢腹立つな〜お前…｣
結局、部屋割りは家永と牛山、土方と尾形、東谷と永倉と言う感じになった。
その日は家永が赤飯を炊いてくれていた。
二日目〜
｢当番を決める｣
土方が居間に皆を集めて上記を話す。
曰く、家事全部を家永と東谷にさせるのは駄目だと言う。当事者である家永と東谷はごもっとも、と頷いていた。
｢家事は女の仕事だろ｣
｢家庭ってのはそう言うもんじゃねぇのか？｣
尾形にとって家庭の形は女が家事を担う。男の仕事は正直分からないのだ。
そんな暗い過去を持っているなんて誰も分からない。
｢手伝い程度はあっても良いんだぜ？｣
｢……ふんっ｣
尾形は牛山の言葉に頭を撫で髪を揃えて黙ってしまった。
その間にも話は進み、尾形に結構仕事が割り振りされていたのを彼はまだ知らない。
｢俺にだけ何だか家事の手伝い多くないか？｣
今気付いた。
しかし、後日、丁寧な仕事ぶりと言葉が多いながらもしっかりとやる姿が目撃された。
三日目〜
｢｢ｳｷﾞｬｧｧｧ!!!｣」
東谷と家永が台所で騒ぐ。
そこに永倉、尾形が即座に駆けつけた。
｢どうしたっ！！？｣
永倉が叫び、そこを見れば、二人して抱き付く家永と東谷の姿。
｢そっ、そこ、ゴ…｣
｢…ただのゴキブリか｣
尾形が興味無さげにその場から離れようとすると、彼の足元をすかささず横切る物体があり、ビクッ！と驚いた彼は永倉に抱き付く。
｢なるほど、やはり皆そう言う物が嫌いなんだな｣
｢今のは…驚いただけだ｣
｢なら離してくれんかのぅ｣
まるで猫ちゃんだ。
そこに牛山が乱入していく。
｢どうしたぁ…ん？ゴキブリじゃねぇか｣
彼はそれを掴むと窓から捨てた。
｢……なんだったんだ？｣
残されたのは謎の空気だったとさ。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
