チキチキ！ヤクザレース！[弐] ページ30
＜尾形目線＞
──── ｼｭﾊﾟｧﾝｯ!!!
その音と共に人間は一人死ぬ。
もう何人殺したのだろうか。俺は櫓から日泥一家を狙撃し、撃ち殺していた。目的の人物は冷静に指示しており、段々こちらが不利になっているが、別にどうでも良い。
俺と、Aが死ななければどうだって良い。これでも同伴者には優しいんだぜ？それに、Aが居なければ勇作殿がどうなるか分からん。下手に死なれては困るのだ。
｢……おかしいな、あの箱に女将が飛び付かん｣
｢刺青への執着心が無いわけでもない…っ、やはり偽物だったわけか！！｣
気付いた瞬間、俺は民家を突っ切って来た日泥一家が居て、急いで降りようとしたが、狙撃された。
｢ぐっ……ははぁ…！｣
左肩下に撃たれ、櫓から落ちてしまう。しかし、致命傷ではないし、動けないわけでもない。
応急処置を済ませた後、俺は番屋に向かった。
しかし、そこで思わぬ衝撃が体に当たった。
｢……っ、尾形！？｣
｢何でこんな所に居る、東谷っ！！｣
そこには息が荒いAの姿と、後ろに追手の姿が合った。
＜東谷目線＞
思わぬ状況に、迫り来る追手。これは怒られるなぁ、なんて呑気に現実逃避していると、尾形が銃を取り出し、三発。それだけで後ろの三人を撃ち殺してしまった。
｢流石は元北鎮部隊…｣
｢脱走兵扱いだ。除隊してねぇよ｣
｢あら、抜けたも同然でしょう？｣
そう言うと頭に鋭い痛みが走る。どうやら頭を叩かれたらしい。結構痛い。
彼はそのまま私が来た道を戻り始める。まぁ、尾形が居れば安全かと思った私も、ついていく。ものの数分で番屋につけば、尾形は火をつけ、番屋に投げ入れる。
ん？ちょっと待て…
｢貴方もしかして私を蒸し焼きにするつもりだったの！？｣
｢どーだかなぁ？｣
くっそ腹立つ。そのまま番屋に居たら今頃蒸し焼き状態だったぞ。彼はそそくさと家に入っていく。私も後を追うと、日泥親子と思わしき人達が揉めていた。
そして、女将が男に殴り殺され、息子が怯えていた。尾形は静かに銃を構えると
──── ｼｭﾊﾟｧﾝｯ!!!
と、銃声が鳴ると同時に旦那の方が撃ち抜かれ、倒れる。
｢親殺しってのは、巣立ちの為の通過儀礼だぜ｣
｢尾形…？｣
｢お前みてぇな意気地の無い奴が、一番ムカつくんだよッ！！！｣
私は、彼がここまで感情的に声を出すのを初めて見た。そうだ、彼も人間なんだ。人間だったんだ。
そして日泥息子は刺青に興味がないのかさっさとどこかへ逃げていった。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
