たった一度の恋。2 (ページ5)

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「はい、これ」

今日もご飯を食べさせてくれたAさんは

気づくといつものTシャツ姿で、それも可愛いな

なんて見惚れていた俺に裸の鍵を手渡した。

「鍵？」

「そう、ここの鍵。お下がりだけど、廉くんにあげる」

お下がりなんて言われるとチクリと心臓が

痛くなるけど、でも素直に嬉しくて

隣に座った彼女の腰へ腕を回して抱き着いた。

「めっちゃ嬉しい」

「大事にしてね」

柔らかいAさんの手が俺の髪に触れて

ふわふわと撫でた。幸せ過ぎて怖いくらいだ。

「あ。そういえばAさん今年夏祭り行った？」

「うん、8月に行ったよ」

「やっぱりか。俺もその日行ってん、そしたらAさんの笑い声聞こえて探したけど見つからんかったからさ」

「そうだったんだ、探してくれてありがとう」

「誰と行ってたん」

「え、んーと」

「待って」

自分で聞いておいて、

リョウマ先輩の名前が出たらどうしよう。

って少し怖くなった俺は掌を彼女に向けて静止を求めた。

けどAさんはそんな俺の気持ちを

察してくれたのか大丈夫、って優しく微笑んだ。

「会社の人と行っただけだから」

本当Aさんは大人で

こんなことで嫉妬したり不安に感じてる自分が

情けなくて仕方なかった。