たった一度の恋。2 (ページ21)

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「何が一番楽しかった？」

「んー岸くんの焼きそば食べてる時かな」

「は？一番最初やん(笑)ピークそこなん？」

夕方近く、仮設的に置かれたベンチに座って休憩中

隣に座るAさんはクレープを頬張っている。

こういうとこは女性って言うより女の子って感じする。

「あの子って廉くんの友達じゃない？」

Aさんに見とれていると

突然誰かを指さすから、仕方なく目線を向けた。

すると、そこには重そうな段ボールを抱えて

フラフラと危なっかしい足取りで歩くモナがいた。

「Aさんごめん、ちょっと行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

小さく手を振るAさんに見送られながら

モナの元へ駆け寄って段ボールを奪った。

「え、あ、永瀬くん！？」

「何処運ぶん」

「え‥えと、2階の研究室まで」

「ん」

「でも悪いからいいよ」

「危なっかしくて見てられへんから」

「‥‥ごめんね、ありがとう」

モナも俺もそんなおしゃべりちゃうし

２人で居る時は結構沈黙が続く。

けど、今日は周りのどんちゃん騒ぎでそんな沈黙も

かき消されていた。

「本当、ごめんね。助かりました」

「そんな謝らんでえーよ。どうせ押し付けられて断れんかったんやろ」

「‥うん、まあ」

指定された場所に段ボールを置くと

ありがとうや、ごめんを繰り返すモナと別れて

Aさんの元へと来た道を引き返す。

はよ戻らな、またナンパされてたら困る。