たった一度の恋。2 (ページ18)

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「Aさん迎えに行かなくていーのかよ」

「うん、仕事終わり次第くるらしいからな」

学祭当日。

優太を含めた同学年のサークル仲間、数人が

出店している焼きそばを食べに来ると

バンダナを巻いた優太が焼きそばを手渡してくれた。

「それ俺が作った分だから味の保証すっから！」

「期待せんとくわ」

「おい、期待しろ？」

「岸くん私達にも1つずつ下さい！」

「おう！任せて」

ツムギとモナの注文に快活な声で応えた優太は

透明のフードパックに輪ゴムを通した。

「廉、ひとくち頂戴。」

「ええよ」

「Aさんは？来るんじゃなかったっけ？」

「午後からな。あ優太、紫耀来たで」

ジンも合流してすぐ紫耀がお待たせー、と

でっかい段ボールを抱えて現れた。

どうやら雑用を任されていたらしい。

紫耀は力持ちやからな、俺でもこいつを頼ると思う。

「紫耀、わりーな！助かった！」

「全然いいよ。その代わり焼きそば奢ってね」

「勿論！勿論！」

「あれ、廉‥Aさんは？」

あーもう、これ何回説明したらええねん。

午後から‥そう言葉を発した瞬間ポケットに

突っ込んでいた携帯が着信音を鳴らした。

「もしもし、廉くん？着いたよ」

「まじ？どこ居んの？」

「んー自動販売機が見える」

受話器越しに聞こえるAさんの声と混ざって

客引きやらナンパっぽい声やらが聞こえて来て

居てもたってもいられなくなる。

「は、なんでもっと早く言ってくれんかったん？言ってくれたら校門まで迎えに行ったやん」

「案外早く着いちゃったから、何か予定とかあると思って」

何してても、早く会えるなら

俺はAさんを優先するに決まってんのにな。

焦る気持ちと逸る気持ちは自然と早歩きになる

正直な体が表現していた。