弐・お義父さんが無惨様とか勘弁してほしい【鬼滅の刃】

廿捌 ページ28

無惨様の気分が優れない時、首を切断されたり、体を八つ裂きにされるのはいつもの事だ。

だから誰も何も言わない。

そもそも無惨様に歯向かうなど、死にたいと言っているのと同じようなものだ。

それなのに何故かAは殺気を放つ無惨様の前へ怖気付くことなく行った。


そうして一言

『今すぐ謝って？』

と無惨様に言い放った。


いつもと変わらない表情に声色。
しかし殺気が異様な程Aから放たれていた。



戦闘後ということもあるのか、少々……いや大分頭に血が上っている。


その場にいた上弦の鬼は、俺を含め皆唖然としていた。



無惨様から放たれる殺気とAから放たれる殺気に挟まれ、俺たちはただその光景を見つめることしか出来ない。

特に無惨様からの威圧感で押しつぶされそうだ。

それにしても先程からAの様子がおかしい。

無惨様は相当苛立っているのか気づいていないようだ。



「私に指図するのか。今私は機嫌が悪い。早くそこからどけ。」


普段ならばこんな無礼者、喋る暇もなく殺されるだろう。
これは無惨様なりの優しさでもあり、忠告でもあった。


にも関わらずAはそこから動く様子はなかった。

いつもは無惨様が少しでも怒ると、泣いてしまうほどに弱虫なAだがやはりいつもと違う。


何故そこまで怒っているのか俺には理解できなかった。



「どけと言っているだろう！！」


痺れを切らしたのか無惨様が怒鳴った。

冷や汗が止まらない。
なぜAは平気でたっていられる？

上限の俺たちですらこの体勢を保つので精一杯だ。

堕姫なんて恐怖で震えている。



あのままではAが殺されてしまう。
黒死牟も同じ事を思ったのかAをこの場から引き剥がそうとしていた。


しかし黒死牟が動く前に無惨様が動いた。


触手のようなものをAに突き刺し、鬼にしようとしたのだ。


しかしAに触手が届くことは無かった。
Aの方に伸びたはずの触手は宙を舞い、俺たちの前に落下した。


『無惨が謝るまでここからどかないから』


そう言うAはやはりいつも通りのAだった。

唯一違うといえば、無惨様への呼び方と先程から言っている異様な程の殺気くらいだろう。


流石に無惨様も異常に気づいたのか、鳴女にAを寝室へ飛ばすように言った。


しかし琵琶を鳴らそうとした鳴女にAは見向きもせずに一言いった。


『鳴女ちゃん。飛ばさないでね。』

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