第8話「買い物」夢主 ページ9
「…おい、着いたぞ」
そう言い、中也さんが立ち止まったのは私のような田舎者でも聞いたことがあるような有名高級服飾店。
勿論言うまでもなく庶民が気軽に立ち寄るような場所ではなく、私の金銭感覚では目玉が飛び出る程高い。
「あ……あの、私、お金……。」
ダラダラと冷や汗を流す私を、中也さんがかなり強引に店内へと連れていく。
「気にするな、いろは。俺からの前祝いだと思っておけ。」
嬉しそうに笑う中也さんに、私は「はい……。」と答えるしかなくなっていた。
二人はよく来るらしく、それぞれが店員さんと親しげにお話されている。
私はそれを、試着室の前で一人離れて観ていたのだった。
「……緊張しますよね。」
隣に来た店員さんはどうやら新人さんだとかで、まだまだ慣れないのだそう。
因みに店内は事前に連絡していたらしく、他にお客さんは見当たらない……というか、店の外にも人影があまりない。
時折真っ黒なスーツを着た男の人が歩いているのが見えるだけである。
「……はい。こんな、一生来れないと思っていた……夢みたいな場所に案内されるんですから……。」
私が苦笑いすると、その店員さんも分かります、と力なく笑う。
「先輩方は完璧で、早くせめて足元くらいには行きたいんですけれど緊張からかミスばかりしてしまって。」
本当はお客様とこんな会話をするのはご法度なんですけれど。
と、店員さんは言う。
それでも話して下さったのは、私に似たものを感じて安心できる様に……だったのだろう。
私は高級店は店員さんの心構えまで違うなぁ……と、それぞれワンピースを手に言い合いを始めたお二人を眺めながら、ぼんやりと思っていたのだった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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ラッキーアイテム
革ベルト
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時