第41話「お出かけ・壱」夢主 ページ42
「いろは、本当に行くのかい?」
「行きます。ただ遊ぶだけですって。夕飯までには帰ってきますから。」
次の日、私が出かけようとすると捨てられた子犬のような目で私を引き留めようとしてくる太宰さんに、私は苦笑した。
「だって私、いろは以外の人が作ったご飯食べたくないし。」
「……太宰さん、それ何人に云いました?」
「いろは以外には云おうと思ったことすらないよ!」
私が冷ややかな目で見ると、太宰さんは焦ったように弁解する……が、多分嘘だろう。
だって太宰さんだもの。
悪い意味でその辺りは信頼しているのだ。
悪い意味で。
そう、悪い意味で。
「ともかく。行きますから。ちゃんと国木田さんの云う事聞いてお仕事しないと夕飯無しですからね。お弁当はテーブルに置いてありますから。」
「……行ってらっしゃい。」
私がいつもより、少しお洒落しているのが気に入らないらしく、口を尖らせている太宰さんに、私は困って、とりあえず笑ってみせた。
(因みに私と太宰さんは探偵社に入った直後、部屋数が足りなかったので同居しているのだが部屋が開いた後も太宰さんの自i殺を阻止するためそのまま一緒に住んでいる。)
「ごめんね、敦くん。太宰さん説得するのに時間かかっちゃって。」
「厭……朝からお疲れ様。大丈夫だよ、気にしないで。」
そう優しく微笑んでくれる敦くんに、私は思わずきゅんとしてしまう。
「じゃあ、行こうか。私、観たい映画が有るの。付き合ってくれる?」
私がそう云うと、ニッコリ笑って「勿論」と答えてくれる。
まるで優しい御伽噺の中の王子様のようだ……何て思っていると、敦くんは私が鞄を持っていない左手を優しく握る。
「大丈夫だとは思うけど……離れない様に、ね?」
優しく微笑む敦くんは、必然的に左側……つまりは車道側を歩いてくれている。
太宰さんはそういう事はして下さらない。
好きだと云っているにしては不自然だが……兎も角、私は敦くんのそんなさり気ない優しさが嬉しくて、心が温かくなって、笑みを溢したのだった。
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時