第1話「牢の中にて。」中島敦 ページ2
ある日、僕はいつもの様に牢の隅にうずくまっていた。
何故なら、足音が聞こえたからである。
「(嗚呼……院長先生だ。きっと、また僕を虐めに来たんだ…)」
その足音は、いつもの様に僕のすぐ前で止まる。
すぐに僕への罵倒が始まる筈。
そう思い、身を固くした、その時だった。
「……敦、くん?」
院長先生とは似ても似つかない、可愛らしい声が僕の名を呼ぶ。
「……え?」
顔を上げると、其処には自分と同い年くらいの女の子がキラキラとした瞳で僕を見つめる姿があった。
「私、いろは。暁いろはっていうの。中島敦くんであってる?」
そう乗った彼女は、他の誰でもない、“中島敦”に向かって問いを投げかけている。
それに僕がやっと気づいたのは、一分ほど見つめあった後だった。
「えぇっと……違った?ここに居るのは敦くんだけだって“聞いた”んだけれど……」
「う、うぅん、あってる……。僕が、敦だよ。中島、敦。その……聞いたって、誰に?」
「そっか、よかった!!それは勿論___っと、いけない、これは秘密だったんだった。」
だから答えられないの。そう申し訳なさそうに謝った彼女に、僕はいつの間にか見とれていた。
腰くらいの長さまではある、綺麗な黒髪に、真っ赤な唇と、綺麗な蒼い瞳。
綺麗な白い肌が、僕の来ている服とよく似た服から覗いている。
彼女は今まで見てきたどんな女の子や女の人よりも美しいと、本気で思った。
その時、鐘がなり、彼女は慌てた様子になる。
「いけない、もうお昼ご飯の時間。ごめんね、また来るね。バイバイ、敦くん!!」
「あ、あの……!!」
そうふわりと
すると、彼女はなぁに?、と不思議そうに僕に聞いてくる。
「いろはちゃんって……呼んでも良い?」
「……勿論!!」
彼女は笑って、今度こそまたね!!と言って行ってしまう。
……これが、僕と彼女の、出会いである。
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時