【WT】薄氷を踏む【男主】 (ページ12)

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内部通信で自分の名前を呼ぶ声。もう役目は十分らしい。さてさて、どうやってここから抜け出すかな。

いや抜け出さなくてもいっか。避け続ければ問題ないし。

『出水たちとも合流した。うまく撒けそうか?』

『はあい。無理そうなんで、そのまま攻撃しちゃってもへーきです』

『A、お前後で覚えとけよ』

『へへ』

申し訳なさそうな東さんにそのまま攻撃しても大丈夫なことを伝えて、その後に聞こえてきた公平には誤魔化し程度に曖昧な笑いだけ返した。

後で怒られるかも。まあ、後のことは考えないでおこう。そのときはそのときだ。

そして後ろから体の横をすり抜けて行く光の尾。それは建物に当たって土煙が舞った。抜け出すならいまかな。思ったが吉日、グラスホッパーで上に飛び距離を取る。

土煙に紛れて近界民に近づく緑川と米屋の姿が見えた。

「へへ。こーへ、ナイスぅ」

「Aー?お前まじでなんでここにいんだよ。今すぐ帰れ」

「やだ」

顔を合わせるなり公平に頬を引っ張られる。トリオン体だけど地味に痛い。帰れ。帰らない。お前まだ熱あんだろ。下がった!ぎゃあぎゃあ言い合っていると荒船さんから遊ぶなって通信が飛んできた。ごめんなさい。

そんなことしているうちに降り注ぐ弾の雨。慌てて外から建物内に転がり込んだ。あいつ、空も飛べんの?

「トリオンえげつな……」