*アズユーライク

PM07:29 izw ページ49

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“何時頃帰る？”って日が傾き始めた頃送ったのに、返ってくるのは日が沈んでから。


時間を聞いたんだけどなぁ。
“今オフィス出たとこ”って。

業務連絡か、ばか。


私は急いでメッセージを開いて、そのまま電話をかけた。


「“…もしもーし？”」
『あ、拓司さん お疲れ様。オフィスの最寄りまできた？』
「“いんや歩いてるとこ。どうし、”」
『会いに行ってもいい？』


つい食い気味にそう口にする。


つかの間の沈黙があって、拓司さんは吃驚したみたいに声を詰まらせた。


「“な なん…”」
『会いたいから、ちょっとでも早く』
「“…”」
『駄目、かな…？』
「“俺が駄目って言うと思う？”」


はぁーっていう大きな溜息ひとつ。

直後に聞こえたのは、溢れる想いを噛み殺すような――小さな呟き。


「“……かわい”」


紡がれた言葉にぐんと体温が上がって、早口になりながらも“電車に乗ったら教えて”と伝えて電話を切った。


『…反則でしょ。』


耳に残る甘い響き。

掠れたような低音は鼓膜だけじゃなくて私の心まで揺さぶってくる。


火照る頬を抑えながら支度をしていると、リップを塗り直した所で“電車乗ったからもうすぐ着くよ”って画面に表示された。


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「A！」
『おかえりなさい！』


駅から颯爽と歩いてくる拓司さんが私の名前を呼んではにかんだ。


それがすごく絵になって、きゅんとして。

口をついて出たおかえりって言葉。


拓司さんは照れたように鼻をかくと、“ただいま”って私を抱き寄せた。


「帰ろ」
『うん！』
「明るい道通ってきた？」
『勿論』
「いい子」


ぽんぽんと頭を撫でられるこの行為が 前までは子供扱いに感じてたのに。

私以外に誰にもやってない事に気付いた時すごく嬉しくて、今となっちゃお気に入りだ。


『ふふ』
「…何笑ってんの？」
『内緒。』


“んだよ”って素っ気ない態度、尖る唇。

その反応が見たくて言ってるんだけど、気付いてるかな。


『拓司さんと少しでも一緒に居れて、嬉しいの』


家から数十メートル先の商店街を通ってくるコースで駅までお迎えに来て。

拓司さんと手を繋いで閑散とした住宅街のチカチカ光る街灯の下を抜けて帰るのがどれだけ愛おしいか。


じっと見詰めると彼の唇が頬に当たり、“俺だってそうだよ”って甘く響かせた。




(いつでも俺は会いたいけれど。こうやって求められんのも良いもんだな。)


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壊れた街灯


*

As you like.
- end -

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