PM04:32 kwkm ページ48
.
銀杏がずらりと並ぶ道。
そこに彼はいた。
黄色い絨毯が敷かれている道の、端にあるベンチに座って空を見上げている。
絵になるなあ…と思って足を止めたのに、気付いたら彼の名を呼んでいて。
自分でもちょっとビックリした。
なんだか儚くて、飛んで行っちゃいそうだったから。
つい、ね？
『…拓朗！』
「A」
いつもはシュッとしててクールさを全面に押し出してるのに――私を見つけてくしゃっと笑う顔が、可愛くて愛おしい。
さっきまで感じてた儚さなんて飛んでいって、何気ない仕草にきゅっと心を掴まれた。
…銀杏並木をバックに立ちあがった拓朗は背中に夕陽を受けて、光に透ける金髪がキラキラと光ってる。
『……綺麗』
「何…、イチョウが？」
『拓朗が。』
小走りで寄ってきた彼が吃驚したように目を見開いて。…それからまた笑った。
「Aの方が綺麗やん」
その言葉がじんわりと心に広がって、熱を帯びる。
…照れてるのが見透かされないようにゆっくりと口を開いた。
『…何の媚？』
「あほか、本心や」
『口が上手いね』
「…照れてるならそう言えば？」
『……』
私の顔を覗き込んだ拓朗が、ツンと頬をつつく。
すぐさま噤んでいた口を開いて“うるさい、”と悪態をついたけど、照れ隠しだってバレて。
彼は口角を上げたまま、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
『わっ、ちょっと！』
「はは グシャグシャ(笑)」
『誰のせいだと思って…！』
「俺やろな」
“ごめんな？”って。
聞いたこともない甘い声が耳元から伝わって、脳に衝撃が走る。
『な……！』
ぱっと見上げると唇が重なった。
ちゅっ、ていう可愛いリップ音を立ててすぐに離れてくのがスローモーションに見える。
ほんの一秒にも満たない行為なのに 甘さを分けてもらったみたいに胸がいっぱいになって、恥ずかしくて…思わず下を向いた。
「そろそろ慣れないの？」
『な、慣れないよ……しかも、外だし…』
「誰もおらんけどな」
『そうだとしても！』
「悪かったって」
一連の流れが面白くて、顔を見合わせて吹き出すように笑う。
笑い声から“幸せだね”って聞こえてくるみたいで。
笑顔で彼を見詰めていたら、熱っぽい視線が交わり――もう一度甘い唇が押し付けられた。
(今のままで十分だから…急いで綺麗にならんでええよ。)
.
イチョウ並木
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 820人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しぃ(プロフ) - 遊馬さん» sngwさんが推しである私からすると沼にはまってもらいたいところです笑でも、もっとsngwさんの魅力を知っていただけるとうれしいです！ (2020年2月19日 20時) (
レス) id: 1457e73937 (このIDを非表示/違反報告)
遊馬(プロフ) - しぃさん» こちらこそリクエスト有難うございました！新鮮過ぎてキャラが掴めてませんが良い挑戦になりました。滲み出る頭脳明晰オーラと実況者・ゲームオタク感がいい塩梅で面白かったです(笑) 実況沼が深そうなので出来れば沼落ちせず、足湯程度に楽しみたい所存です…。(笑) (2020年2月19日 17時) (レス) id: 76910c058a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - sngwさんのリク、書いてくださってありがとうございます！実況面白いですよね！たまにほんとに東大生か？と思ってしまいますwww (2020年2月18日 20時) (レス) id: 1457e73937 (このIDを非表示/違反報告)
遊馬(プロフ) - ぬーさん» ご愛読有難うございます。リクエスト承知致しました！更新再開までまだまだ時間がかかりそうですが、より良いものをお届け出来るよう頑張りますのでお待ちいただけたらと思います…！ (2019年12月17日 23時) (レス) id: fccb4604d0 (このIDを非表示/違反報告)
ぬー - はじめまして。いつも素敵なお話ありがとうございます！福良さんでハッピーエンドなお話が読みたいです^^前半、両片思いやすれ違い等少し切ない感じからハッピーエンドの流れだと尚嬉しいです！ご検討いただけると幸いです、よろしくお願いします！ (2019年12月16日 0時) (レス) id: 78f20a16f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遊馬
| 作成日時：2019年8月27日 22時
