*アズユーライク

AM11:40 fkr ページ46

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伸ばされた彼の手を、……無言で叩くと吃驚したように目が見開かれる。


イヤホンを外しながら“なんだ、Aかぁ”なんて言う福良さんにじとっと睨みを利かせた。


「毎日毎日、後ろから脅かすのやめてよ」
『…そう言いたいなら、そろそろまともなご飯選べるようになりませんか。』
「良いじゃん お菓子でも」
『良くないです！』


私がむきになって叫んでも、あはは…なんていつもの笑い方でスルッと通り抜けてく。

…全く掴みどころがないひとだ。


『これも食べてください』
「えー？“野菜たっぷり水餃子のスープ”……って食べれないって分かって言ってるでしょ？」
『…健康的、ですから』
「却下。」
『ちょっと！？』


福良さんに持たせたはずのスープは、一瞬にして私の手の中に戻ってきて颯爽と歩いてレジへ行ってしまう。


「お先〜」


……と言いながら、ひらひらと振る手にはポテトチップスが1つ。

いつの間に取ったの、この人。


ポテトチップスだけで会計をしようとする福良さんを追いかけて、彼でも食べれそうな無難なお弁当と苦し紛れの野菜ジュースを置いた。


『じゃあこれも！お会計一緒で！』
「え？ちょっと」
『いいです！私 払いますから』


ぐいぐいと背中を押すと“分かったってば”なんて笑いながら500円を置いてく福良さん。


毎回こうしてほぼほぼの金額を自分で払って。
オフィスで目敏く見てたら、(野菜ジュースは私に返してくるけど)お弁当は一応食べてくれるのになぁ。


『…いつになったら“自分で”、まともなご飯選ぶようになるんですかね……。』


「……さあ？」
『はぁ、』


素知らぬふりを貫く福良さんを見て、思わず溜息が出たのは見逃して欲しい。

そんな私を見て福良さんが口を開く。


「…Aが作ってくればいいんじゃない？」
『え？』


「お弁当。そしたら毎日悩まなくていいでしょ いつも自分の分作ってきてるじゃん」


文字通りの絶句。
開いた口が塞がらない。


“作ったお弁当ならちゃんと食べてくれるってこと？”…って ありもしない想像をして立ちつくしてたら、福良さんは背を向けてコンビニを出た。

途端にぐんと顔に熱が集まる。期待しちゃうよ。


『……えぇ…？』


――好きだから。
福良さんにとっては何気ない一言でも、気になっちゃうよ。




(不養生なんて…俺に気を向けるための“ただの口実”だって。いつ気付くのかな。)


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駅前のコンビニ

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