*アズユーライク

AM02:57 sgi ページ43

.


いつまで経ってもやってこない睡魔にウンザリして。
携帯と財布を片手に、家を飛び出した。


履きやすくて気に入ってるスニーカーをつっかけて、街灯のおかげでぼんやりと見える道を行くと闇が深まっていく。


“ちょっと怖いけど、冒険みたいで楽しい”

……なんてQKメンバーに言ったら、口を揃えて“危ないですよ！”って怒られそうだな。


『ふふっ』


笑いながら歩くなんて逆に不審者と間違われそう…とか考えてたら楽しくなってきちゃって。

近所をぐるっと回って戻ろうと思ってたのに、少し離れた公園まで足を延ばしていた。


.


『……うわ、止まないなぁ』


公園について数分後。
突然――バケツをひっくり返したような酷い雨に足止めを食らった。


完璧などしゃぶり。

屋根のある小さな休憩スペースのベンチに腰を下ろしたが最後、帰れなくなってしまった。


『コンビニまでも遠いし、雨宿りするしかないかぁ…』


そう呟くと後ろの木々ががさりと揺れた。


『わっ！？』
「おわっ！？」


待って、不審者…っ！って頭を過ったけど。

ビニール傘を構えて、体を縮こまらせた男性、に見覚えがある。
というか ありすぎる。


『――須貝さん？』


「…え？」
『あ！やっぱり！』
「A？ちょっと何してんの こんな夜中に一人で！」


私のことを捉えた瞬間、バタバタと忙しなく屋根の下に入ってきた。

私と反対側に傘の先端を向けて雨粒を揺すり落とすと、空いた片手でぽんと頭を叩かれた。…叩かれたというか、押さえつけられたってくらいだけど。


「もう午前の3時になりかけてるよ？一人で居たら危ないでしょ」
『あは、すみません』
「……さては反省してないな？」
『…』


無言で頷くともう一度ぽんと叩かれる。

真剣な顔でこちらを見てくる須貝さんと目が合って“やばい”と俯く。


「…A？」
『や、ちょっと。見ないでください…スッピン…』


もごもごと話すと、頭の上にあった大きな手が私の手に絡められた。


「化粧してても可愛いけど、今も可愛いよ」


『っか、かわ……何言ってるんですか！もう！』
「本心よ本心。」


慌てる私をよそに、繋がれた手をを引っ張られる。


「帰ろう。送るから」
『…はい』


有無を言わせぬ態度の須貝さんにくっつくよう身を寄せて、私の方へ倒した傘に守られながら二人で歩きだした。


…今日はもう、どきどきして寝れないなぁ。




(近道通って正解だったな。役得。)


.
真夜中の公園

AM05:13 wtnb→←　

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す