*アズユーライク

はにかみを数えて kwkm ページ4

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「なぁ A」

『はい？…きゃっ』

クイズノックメンバーでの飲み会の帰り道。
千鳥足で白線の上を歩くAの名前を呼んで、手を引いた。

柔らかそうな生地のワンピースを翻して振り向くAを抱き寄せる。ただ人肌が恋しくなっただけ、と心に嘘をついて腰に回した手にぎゅっと力を入れた。

『え、えぇっと……？』
「何でもないから、ちょっとこのまま」

うそだ。
なんでもない訳がない。

道端で抱き寄せるなんてこと、いつもならしないはずなのに。


…眠りこけてた伊沢さんたちを見て“俺は大して酔ってない”と思ってたのに、こうも感情の抑えが効かないと酔っぱらってるという事を認めざるを得ない。

同時に ふにゃりと人好きのする笑顔を他の奴に見せていた、という事実を思い出してギリと歯を食いしばった。


『…どうか、しましたか？』


この問いかけに素直に嫉妬したと言えたらどれだけ楽か。

意地っ張りの俺は“別に、”と返事をして顔を上げた。


俺の目の前には困ったような表情で顔を真っ赤にしてるAがいて。
この表情、初めて見たななんてぼうっと考えてるといきなり頬を摘まれた。

「な、」

なに、と紡ごうとした口は頬を摘ままれたことで思うように動かない。

『別に、じゃないでしょう。川上さん、言ってくれなきゃわからないですよ』
「え……、っいはいいはい、！」

軽く摘んでた頬に、ぎゅうと強い力がかかる。
痛い痛いと声を上げるとぱっと手は離されて“言って下さい”と促された。


「え、いや…」
『やじゃん、じゃありません』
「いや言ってないって。」

相変わらず動画をいじって、くすくすと楽しそうにするAが俺の手を握って歩き始める。

『で、どうしたんですか？』

面と向かって言うのが恥ずかしい、俺の気持ちを汲んでくれてるみたいで 気付いたらAの背中に向けてぽろりと本音を零していた。


「……そんなん、ただの嫉妬やん」
『え？』


驚いたようにこちらに振り返ったA。

見る見るうちに口角が上がって、
はにかむように、花が咲くように綻んだAの笑顔は、飲み会でみた表情とまた違う。

俺にしか見せない表情で。


――嫉妬を数えるんじゃなくて、俺の前だけでする表情を数えたいと思った。


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はにかみを数えて

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