*アズユーライク

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「…辞めるとしてもメールで済ませるなんてこと、Aはしない」


俺が強い口調で言い切ると伊沢も福良も思う所があるのか、“確かに”と首を縦に振った。

「何か絶対におかしい気がする。」
「辞めるって事ですか？」

「それもそうだけど、全体的に引っ掛かることが多い」


最近の出来事をひとつひとつ思い出す。


“忙しい”を理由にデートを断られたこと、
寝る前の電話がLINEに変わったこと、
聞いてたはずなのに話を取り違えたこと、
視線が合わなくなった代わりに唇に視線が集中してたこと、

別れを告げた時の悲しそうな笑顔、
呼び止めたはずなのに振り向いてくれなかったこと、
メールでクイズノックを辞めたこと、


かちりとピースがはまった。


ガタンと大きな音を立てて立ち上がる。

「なあ、伊沢！」
「っ、はい？」

「この数ヶ月Aって聞き間違い多かったりした？」
「…そういえば、そんな気も」
「福良は、思い当たる節ある？」
「そ、うですね 何度か話し掛けたのに返事がなかったりとか…？」

「それだ！」


俺に飽きたんじゃなくて、
他の人を好きになってもいないなら、


「……もしかしてだけど、聞こえてないんじゃないか？」


伊沢や福良がはっとした表情で俺を見る。

“まさか、そんな”と動揺したような顔。ゆらゆらと不安気に揺れる瞳。


駄目だ。
仕事に追われてる二人にこれ以上背負わせるわけにはいかない。


「やっぱり納得いかんから話してくる」


投げ捨てた荷物をひったくって二人の制止を振り切り、オフィスを飛び出した。


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行き当たりばったりで探しても見つからないと分かってるから、焦る気持ちを抑え 電車のホームでメンバーや友達に手当たり次第“A見てない？”と連絡を飛ばした。

“本郷から出て行くのは見掛けましたけど、結構前です”と川上から連絡があってキャンパスに居ない事がわかった。


まずいな、広すぎる。


家に帰ってるのか、お気に入りのカフェか、…俺らの思い出の場所――

はっと思い出して、反対側のホームに止まってる電車に飛び乗った。今日だけは駆け込み乗車を見逃してくれ。


落ち着かないから立ったまま、目指してる場所の最寄り駅までいくつかかるか数える。

いつもなら数分間隔で着く電車が遅いなんて思わないけど、今日だけは気持ちが前のめりになってしまう。


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