*アズユーライク

この恋のテーマソング fkr ページ13

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『福良さん福良さん！』

僕のデスクの端からひょこっと顔を出して、上目遣いで見上げるAちゃん。


「…どうしたの？」
『これ、はなおさん達との合宿のお供にどうぞ！』


そう言って差し出されたのはウォークマンだ。メタリックなピンクのボディーはくすんでて、ボタンの文字が掠れている…随分年季が入ってるようだ。
最近はめっきり見かけなくなった懐かしいそれを見詰めてると、僕の手に押し付けてきた。


「え、ウォークマン？」
『まぁまぁ、良いじゃないですかたまには。』
「いいけど なんで僕に？」

まぁまぁ、とはぐらかしつつ“私の好きな曲沢山入れといたので絶対聴いてくださいね？”と念を押され……そのまま僕の手の中に。


「え、ちょっと！」

『私だと思って大切にしてください！』


それじゃお疲れ様です！とオフィスから逃げるように出て行くAちゃん。
…僕の手には僕が選びそうもないピンク色のウォークマンが残った。


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合宿に向かうために車に乗り込む。僕の隣には川上が居て、僕の手に持ってるウォークマンを見て目を見開いた。


「…それ」
「え？ああ、Aちゃんが貸してくれたんだ」

「あ、Aのなんですね。……ほんまや、このステッカー高校生の時Aがハマってたやつだ。福良さんピンク派かって一瞬思っちゃいました」


クスクスと口元に手を当てて笑う川上に 違うよ〜、と軽く反論して鞄からイヤホンを探す。年季が入ってるなと思った通り、幼馴染の川上の記憶に残るほど愛用してたんだなぁ。

そう考えてると何かを思い出したように川上が そういえば、と続けた。


「それ、高校生の時俺が“半日だけ貸して”って言っても貸してくれなかったんですよ。」

「…大切だったんだね？」

「それもあるでしょうけど、断った理由が他にもあったんです。…あ、問題。それは何故でしょう」


いきなりの問題に僕が目を見開いて、その反応を見て川上は目を細めて笑った。


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