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「なーに？話って。」


俺とAが向かい合って座った、その間に
相葉くんは隣のテーブル席から椅子を持ってきて座った。



「おい雅紀！お前も食うのか！？」


厨房の中から親父さんの声が聞こえて


「食う食う！」


って答えた相葉くんは
俺たちの方に改めて向き直った。



「.....あのね、相葉くん。
今日は、ユリちゃんからお金を預かってきたの。」



Aがそう言って
バッグに中から現金の入った小封筒を取り出した。


「“昨日は食い逃げしてごめんなさい”って
伝えて欲しいって。」



Aがテーブルの上に小封筒を置いて
相葉くんに差し出して。


その時の相葉くんから
表情が消えたのを、俺は見逃さなかった。




「.....あぁ。それならいいんだ。
昨日は、俺のおごりだからって。返しといて？」


一瞬で笑顔に戻った相葉くんは
テーブルに差し出された小封筒を
Aの方に押し戻した。


Aは、
しばらく考えてから



「.....わかった。このお金は
責任を持ってユリちゃんにお返しするね。」


そう言って
小封筒をカバンの中にしまって。



「.....ねぇ、相葉くん。
さっき、おばさんが言ってたの。

昨日の閉店後、ここで相葉くんが女の子とゴハン食べてたって。
その後、遅い時間なのに1人で返しちゃったって。

その女の子って.....ユリちゃん、だよね？」



相葉くんをじっと見て
問い正そうとしてて。


さっき、おばさんの話を聞いた時
Aも俺と同じことを思ったんだと確信する。


けれど。



「うん。そうそう。
俺、ちょっと失礼なこと言っちゃってさ(笑)
怒らせて、1人で返しちゃったんだよね。」



相葉くんの返答は
あまりにも軽いノリで。



多分それが、Aの神経を逆なでしたに違いなかった。





「.....ユリちゃん、今日すごい泣き腫らした顔で学校に来たの。

何かあったのかって聞いても、ユリちゃんは私に何も教えてくれなかった。
何も聞かずに、お金だけ預かってきたの。

相葉くん.....ユリちゃんに何をしたの？
何で傷つけたの？
.....何でっ.....！」



「.....A。店の中だから。」


Aの声が、徐々に大きくなってきて
怒りが止まらない様子が見て取れて。

店内にお客さんは疎らだったけど
このまま喋らせておくのはマズイと思って

声をかけて制止した。



Aの目には、今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっていた。





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