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「.....翔、お風呂入るでしょ？」


パチン、パチンといろんな部屋の電気をつけながら
玄関で立ち尽くす翔に声をかける。


「.....いや...でも。」



お母さんが留守なことに戸惑ったのか
いきなりお風呂って言われたのに戸惑ったのか
わからないけど。



「すごい汗だもん。風邪ひいちゃうよ？」


その場に翔を残して2階に上がって
タオルと部屋に置いといた翔の着替えを持ってきて、お風呂に置いて。


「準備できたからいいよ？」


そう言ったら


「じゃぁ、先に借りる。」


って、素直にお風呂場に入っていった。





汗だくで走ってきてくれたのが
すごく嬉しかった。


家までくる時も
何も言わずにずっと私の後ろをついてきて。

お母さんに叱られた子供みたいで
なんだか可愛かった。


手も繋がずに歩いてきたのは
きっと、私に気を遣ってるからだよね？



今日、泉谷さんと話したお陰で

私の心の中にあった蟠(わだかま)りが何なのかはっきりしたの。



翔の気持ちが知りたい。

今まで翔の態度で“きっとこうだ”って推測して
“きっと私を好きでいてくれてる”って
自分に言い聞かせた。



はっきり言ってくれない翔に
不安になったりもしたの。


学祭の時だってそう。
扉の向こうにいた翔は、私への気持ちを
泉谷さんには話してくれたけど

私は、面と向かって言われたわけじゃない。

“ごめん”って何度も言われただけで。



私への気持ちは、何も聞いてなかったんだ。



だからはっきりしたくて。
ちゃんと言葉で言って欲しくて。



今夜は、翔の気持ち
全部、聴きたい。



そう思って、翔が
お風呂から出てくるのを

少しだけドキドキして待った。








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片付けしてたら、翔がお風呂から出てきて。


もう秋だって言うのに、平気で半袖のTシャツ着てる姿に
やっぱり翔だなって、笑いがこみ上げる。


「寒くないの？」


「全然。」



そんなやりとりをしながらリビングのテーブルにお茶を持って行ったら
翔は素直に席に着いた。



「.....私も、お風呂入ってくるね？」



「ああ。」




返事をした翔は、少し緊張しているみたいだったけど
テレビをつけてあげたら、いつもみたいに
ソファーに寄りかかって
画面を見つめてた。




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