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side翔




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汗だくでAのバイト先まで走ってきたら
その保育園の電気はすでに消えていて。


向かいにあるカフェのカウンター席に
Aが1人で座ってるのが見えた。


ポケットからスマホを取り出して
通話ボタンをタップする。


カウンターテーブルに置いたスマホが鳴ったのに気づいたAは
窓の外に視線を移して、俺の姿を捉えると
そのまま立ち上がって店から出てきた。



「.....お待たせ。」


「.....ううん。」


まだ息が切れたまま、汗だくな俺を見たAは



「.....走ってきたの？」


そう言って、自分のカバンの中から
タオルを取り出して、俺の首にかけた。

その瞬間にAの匂いがして


「.....急いで来てくれて、ありがと。」


そんな優しいことを言うから


....めちゃくちゃ好きだ。


って、それだけで胸の奥が苦しくなった。



”会いたい“って言われて
慌てて迎えにきたのはいいけど

その後どうするかなんて、俺は全然考えてなくて。

その場に立ち尽くしていたら



「.....私の家でもいい？」

Aが遠慮がちに言って、歩き出した。


「全然いいよ。」

そう言って俺は、Aの少し後ろを追いかけて。



俺のアパートって言われなかったことに
ちょっとだけショックを受けた。


隣に並んで、手を繋いでもいいものか
でも、拒まれたらそれもショックだな。

いやでも“会いたい”って言われてるわけだし
“ちゃんと好き”って言われたし


でも俺は今、いつ突き放されてもおかしくない立場だし.....

って、悶々と考える。


そうしてるうちに、Aの家に着いて。

家の灯りがついていないのに違和感を覚えた。



「.....おばさん、いねぇの？」


玄関の鍵を開けるAに声をかけると
ガチャガチャと鍵を回しながら


「.....社員旅行で明日帰ってくるの。」

俺の方は見ずに、そう答えた。



「ただいま。」

って言って玄関に入るAを追いかけて


「お邪魔します。」

って中に入りながら、ふと気づく。




じゃぁ昨日も、きっとおばさんはいなかったわけだろ？

それなのに俺は、誰もいない家に
泣かせたまま1人で返したのか。


完全にダメな男だ。って
自分でも呆れる。




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