33話「似た者同士」 ページ33
「らっだぁさんなら理解してくれると思ってたんですけどね」
そう言って地面に突っ伏して縛られている俺たち二人を見下ろすトラゾーさん。声を荒げようとトラゾーさんを見上げたその時、俺の目に映ったのは信じられない光景で。
「きょーさん、レウさん…コンちゃん……」
意識を失っているのか、抵抗も一切しないまま縛られている三人を見て俺は言葉を失った。
さっきから連絡がつかなかった理由はこれかよ……!
トラゾーさんは物のように三人を床に落とすと手の埃をパッパッ、と軽く払った。
「安心してください。何も痛いことはしていませんし、俺たちは本当に争うつもりはないので」
「_っは、もう既に俺たち全員を縛ってる上にこの館で青鬼の召喚をするとかいう悪行やっておいてまだそんなこと言うんですか?」
俺がそう言うとトラゾーさんは「ぐうの音も出ない」と失笑した。だけど、そのビニール袋の隙間から覗く緑色の瞳は笑っておらず、俺を突き刺す。
「確かに「六人目」であるAさんは貴方たちと同じようにこの町の貴重な原料であり、生前そちらが執着をしてようやく手に入れた代物でしょう。こちらとしても、そんな方を拐うだなんて心苦しくなりますよ」
どの口が言う。心苦しかったら少しでも苦い顔をしてみろよ。青鬼を召喚してた時のしにがみくんのような、そんな苦しそうな表情を。
「ですが、こちらにだって譲れない事情はあるんですよ」
そんな俺の考えがやはり届かなかったのか、トラゾーさんは冷めた表情で吐き捨てた。
しにがみくんとクロノアさんも近寄ってきて、三人揃って俺を見下ろしてくる。
「確かに他所の町である俺たちの事情は知ったこっちゃないでしょう。__でも、こっちだって一緒なんです。この館が青鬼に侵食された?らっだぁさんが青鬼としての力を取り戻した?そんなのどうだっていいんです」
「こっちにだって、護るべき存在が居る」
俺たちがAを護ろうとしているのと同じで、向こうにも護る存在が居るんだ。
それが、今こうして三人が必死になって護ろうと尽力しているぺいんとのことなんだろう。
「……Aが神の要望に合ってるから、拐おうと?」
「まぁ要するにそういうことですね。我々の町同士の仲は悪くなるかもしれませんが、俺たちには、あいつが必要なんで」
「ほんと、心苦しいですよ」
嗚呼、仲間のことで周りが見えなくなってしまうところは似た者同士だな。
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黒狐 - …!前の作品も読ませていただいてました!リメイク版してるのみて駆けつけました!リメイク版も面白いですね!同じ作品を2度楽しめてこちらも楽しいです!ありがとうございます!更新応援してます! (4月23日 22時) (レス) @page43 id: fb020f6fb3 (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 2.3年前から読ませて頂いていて何度も読み返すほど大好きな作品です!リメイク前の方も読ませて頂いてます!変わった妖怪という世界観だったりする所やストーリー 設定などとても面白くてめちゃくちゃ好きですまたいつか続きが読める事をずっと待っています。失礼しました (7月3日 11時) (レス) id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
ミドロ - なにこれ……か、か…!神作じゃねぇかよぉぉぉぉぉ!!!!更新頑張ってください!!!! (5月30日 13時) (レス) @page14 id: 9d7832c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
トキ(プロフ) - まだ待ってますから、どうか続きを恵んでください (2022年9月11日 17時) (レス) @page14 id: 44c169a7de (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - 凄い………私もこんなの作って見たいのですか妖怪などが思い浮かばないです……少しだけ真似してもよろしいでしょうか(土下座)続編待っています!! (2022年1月30日 9時) (レス) id: 30ab8735d2 (このIDを非表示/違反報告)
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